2020.11.05 【電源・パワー半導体技術特集】トレックス・セミコン 全固体電池に特化充電用レギュレータICなど開発
[図1]XC6240シリーズの回路構成例
【はじめに】
リチウムイオン電池を超える次世代電池として全固体電池の開発が進んでいる。全固体電池は、一般的な電池で使用する電解液の代わりに固体の電解質を活用することで寿命が長く、構造や形状にも重度が増すなど、様々な利点を有する。小型かつ高エネルギー密度を実現し、過酷な環境下でも高いパフォーマンスを発揮するため、今後幅広い分野での利用が期待されている。
全固体電池をはじめとする次世代電池は、CV(定電圧)充電対応の電池も多い。トレック・セミコンダクターは、CV充電2次電池に特化した充電用レギュレータICと電池電圧監視ICを開発した。将来、IoTやウエアラブル機器などに全固体電池などの次世代電池が使用されることを見込み、同社の持つ小型・低消費電力技術を生かし次世代電池に最適なソリューション提供を目指す。
【CV充電対応2次電池用充電IC「XC6240シリーズ」】
充電用レギュレータIC「XC6240シリーズ」は、2.3V系のリチウムイオン2次電池の充電電圧に対応した出力電圧となっており、ばらつきを考慮しても2次電池の上限充電電圧を超えない充電が可能となっている。
電池からの放電電流は0.24μAと低く、待機時の電流消費を抑えることができる(図1、2)。入力電圧範囲は1.5-6.0V(最大定格6.5V)。出力電圧は2.63V、最大出力電流は200mA。消費電力は0.8μA。低消費電力を実現。動作温度範囲はマイナス40-プラス85℃。パッケージはSSOT-24(2.0×2.1×1.1mm)、USPN-4(0.9×1.2×0.4mm)、USP6B-06(1.5×1.8×0.33mm)の3種類を用意した。
【CV充電対応2次電池向け電池電圧監視IC「XC6140シリーズ」】
電池電圧監視IC「XC6140シリーズ」は2.3V系のリチウム2次電池の電池特性に最適化された検出電圧、解除電圧が設定されている。検出電圧は用途と電池の内部抵抗に合わせて1.6-2.2Vの間で選択できる。解除電圧は2.475V固定となっており、充電用レギュレータで充電開始することで解除する電圧に設定されている(図3)。
動作電圧範囲は1.1-6.0V(絶対最大定格7.0V)、検出電圧範囲は1.6-2.2V、超低消費電流は104nAの超低消費電流を実現した。
動作温度範囲はマイナス40-プラス105℃。パッケージはSSOT-24(2.0×2.1×0.65mm)、USPQ-4B05(1.0×1.0×0.33mm)の2種類を用意した。
【評価ボード提供により迅速な開発をサポート】
XC6240シリーズとXC6140シリーズを実装した評価ボードも用意した。コイン電池とラミネート電池それぞれに対応可能。容易にソリューション評価を行うことができ、開発期間の短縮にもつながる(写真1)。
【最後に】
全固体電池は液漏れなどが発生せず高い安全性を実現するため、安心・安全が要求され長寿命が求められる用途で今後活用されると見込まれる。形状の自由度も増し、様々な用途への応用展開も進むだろう。これらの次世代電池が普及するためには、電池特性を最大限に引き出し、安全な充電を制御する回路も必要。今回、同社が開発した充電用レギュレータIC、電池電圧監視ICにより、最適な充電を実現し電池駆動時間の長時間化に大きく貢献する。同社は今後も市場ニーズに合わせた製品開発を迅速に行い、豊かな社会実現に貢献していく。