2020.11.12 【ケーブルテレビ特集】加入世帯数が年々増加IoT/無線サービスを新しい柱

 安心・安全、快適を提供する地域の重要なインフラとして成長してきたケーブルテレビ(CATV)。CATV加入世帯数は年々増加し、19年度末時点で自主放送を行う有線電気通信設備(501端子以上)によりサービスを受ける加入世帯数は約3091万世帯、世帯普及率は約52.3%に達している。

放送サービスの高度化

 新型コロナウイルスの感染拡大により、世界全体で経済活動が縮小している中、ICTを活用したテレワークや遠隔医療、遠隔教育などが急速に進んでいる。CATVではIoTサービス(ケーブルIoT)や無線サービスを新しい柱として取り組む。

 CATVならではの地域力を生かし、機器の設置やトラブル対応など各家庭へのキメ細やかな対応も行われている。CATV事業者はIoT機器とサービスをセットで提供しており、安心して手軽にIoTを利用できることがケーブルIoTの強み。今後のIoT機器の充実により、CATVを通じて暮らしがさらに便利になっていくことが期待される。

動き始めたローカル5G

 無線サービスとしてローカル5Gへの取り組みを強化。コロナ禍の中、地域・社会の重要インフラであるCATVは大いに期待される。第5世代高速通信規格5Gを企業や自治体などが自ら構築できる「ローカル5G」の実用化への取り組みが本格化し、CATV業界でも事業化に向けて動き始めた。

 CATV網とローカル5Gを組み合わせることで様々な地域サービスやコンテンツサービスなどを展開でき、新たなビジネス機会と捉えるところが多い。既に総務省などとの実証実験も始まっており、この流れはさらに加速しそうだ。

 現在は無線利活用促進を含むネットワークやサービスなどの高度化に向けた取り組みに注力し、有線と無線の融合をはじめとするネットワークの高度化に関する技術検討を進めている。

 特にCATVの有線網、無線網を生かし、地域住民が住みやすい環境や様々なサービスの提供を目指す方針で、ローカル5Gのシステム構築と運用支援を今後の大きな事業機会と捉え、積極的に取り組んでいる。

 今回、利用が可能になるのは衛星通信業務などとの共用検討が終わった高周波数帯域28ギガヘルツ帯(28.2-28.3ギガヘルツ)の100メガヘルツ幅で、最大通信速度3ギガbpsという超高速の無線網を自営で構築できる。これにより、5Gを利用している地域では、比較的小規模な高速無線通信環境を構築して、工場や建設現場、商業施設、学校などで活用可能な無線局免許を自ら取得できるほか、免許を取得した他者のシステムも利用できるようになる。

 具体的な利用イメージは、スマートファクトリー、重機の遠隔操作、ライブビューイング、スタジアムソリューション、複合商業設備ネットワークなどがあり、5Gの利点を生かしつつ、場所・時間・利用者に応じた環境を手軽に実現する。高精細4K放送や、超高精細8K放送の無線伝送などにも期待がかかる。

 そのような中、ローカル5Gの普及を見据え、各地域で実証実験も始まっている。19年12月に住友商事、インターネットイニシアティブ(IIJ)、ケーブルテレビ事業者5社、地域ワイヤレスジャパンは、ローカル5Gの活用を目的とした無線プラットフォーム事業を展開する新会社グレープ・ワンを立ち上げた。ローカル5Gの普及・拡大のため、それぞれの持つノウハウを最大限活用し、日本ケーブルテレビ連盟と連携してケーブルテレビ事業者向けの各種サービスの提供を開始する。

 ローカル通信のため高い安定性とセキュリティが確保できることも特徴で、柔軟なエリア展開が可能。地域課題の解決や産業の発展に役立つと見込まれている。

 一方、ローカル5Gを展開するためには回線の光化が必要だ。20年度2次補正予算に盛り込まれている光化の予算も活用できる。

総務省、光ファイバ整備に20年度502億円

 総務省は光ファイバ整備事業(高度無線環境整備推進事業)に20年度第2次補正予算として約502億円を投入する。20年度当初予算は約53億円だったため、10倍近い規模になる。新型コロナ感染拡大の影響でテレワークなどの重要性が高まったことを踏まえ、大幅に予算を拡充したことになった。

 昨年に公表した「ICTインフラ地域展開マスタープラン」は、23年度末を視野に入れた5Gや光ファイバなどのICTインフラの整備目標にしていたが、2年前倒しして21年度末までに達成する。5Gでは23年度末の基地局整備数を開設計画の3倍となる約21万局以上と大幅に前倒しする。

 マスタープランでは条件不利地域のエリア整備(基地局整備)、5Gなど高度化サービスの普及展開、鉄道/道路トンネルの電波遮へい対策、光ファイバ整備を一体的かつ効果的に実施する。

 21年度中に市町村が希望する全ての地域で光ファイバを整備し、光ファイバの未整備世帯を21年度末には約18万世帯にまで減少させることを目指すとしている。特に、地方のICTインフラの整備を加速し、都市と地方の情報格差のない「Society5.0時代の地方」の実現を図る。

 光ファイバ整備推進の施策概要として、光ファイバ未整備の学校がある地域や、地方公共団体や通信事業者などに対し5Gの高速・大容量無線通信の前提となる光ファイバ整備を支援する。

 全国に蓄積されたビッグデータをAI(人工知能)で分析することで、ICTの高度な利活用によるソリューションをモデル化し、ICTによる地域課題解決や地域活性化の実現した成果の海外展開を図るとしている。