2020.11.19 【IoTを支える無線技術特集】 電子部品各社IoT分野への取り組み強化LPWAの各規格対応通信モジュールなど

ブルートゥース5対応モジュール(ラピスセミコンダクタ)

Sigfox RFモジュール(SMK)Sigfox RFモジュール(SMK)

 電子部品メーカー各社は、今後の市場拡大が期待される「IoT市場」への取り組みを強化している。IoTの本格化により、様々なモノが相互につながるネットワーク社会が到来し、人々の暮らしを大きく変革することが予想されている。各社はIoTを支える無線通信デバイスとして、ブルートゥースやLPWA(ロー・パワー・ワイド・エリア)の各規格に準拠した通信モジュール開発に取り組むとともに、高精度センサーやソフトウエア技術などの組み合わせによる複合的な提案を促進する。

 IoTの応用分野は工場の生産性向上や自動車運転支援、社会インフラの防災対策、セキュリティ、効率的なエネルギー活用、営業支援、医療/介護/ヘルスケア、農業関連など幅広い。

 電子部品各社は、IoT市場に照準を合わせ、高性能な電子部品の開発・提案に注力している。

ブルートゥース/BLEモジュール

 ブルートゥースは、19年にはブルートゥースSIGメンバー企業数が3万5000社を超え、ブルートゥースデバイスの年間出荷台数も年々増加している。特に近年は、ブルートゥース・ロー・エナジー(BLE)の急速な成長が続いている。

 ブルートゥースSIGでは、様々なブルートゥース対応デバイスとの接続のため、24年には出荷される全てのプラットフォームデバイスがブルートゥース無線の両バージョン(クラシック+LE)に対応すると予想する。

 電子部品メーカーは、ブルートゥース市場の拡大に対応し、バージョン5対応モジュールの開発を活発化させている。ブルートゥース5規格は、2Mbps高速伝送と通知データ容量増加(拡張アドバタイズ)に対応し、既存のブルートゥース4規格と比較し、データ通信時間の半減や、最大8倍の通知データの取り扱いが可能。ブルートゥースクラシックとBLEの両アプリケーションを内蔵した、ブルートゥース5.0対応通信モジュール開発なども進んでいる。

LPWA通信モジュール

 IoT向け無線通信として「LPWA」技術が脚光を浴びている。電子部品各社は、各種LPWA規格に対応した無線モジュール開発を加速させている。

 LPWAは無線LANなどに比べデータ伝送速度は遅いが、低消費電力や低コストに強みを持ち、数キロメートルから規格によって数十キロメートルの長い通信距離に対応。既存無線通信の非カバー領域をサポートする仕様として活用拡大が期待されている。

 LPWAの主な規格には、「Sigfox(シグフォックス)」「LoRa(ローラ)WAN」「LTE Cat.M」「LTE.Cat.1」「NB-IoT」「IP500」などがある。

 サブギガ帯を使用するSigfoxやLoRaWANは、10キロメートル以上の長距離伝送が可能。近年は、LTE-MやNB-IoTといった携帯キャリアによるセルラー系LPWAの商用サービスも開始され、本格的に立ち上がりつつある。

 いずれのLPWA規格も送受信時の消費電力が数十mW程度(規格によっては数mWから)と低消費電力が特徴。部品各社は、モジュールの小型化に向け、高機能基板への部品内蔵、微細チップ部品による両面実装、解析技術や構造評価技術、パッケージング技術などを追求した製品開発に注力する。

無線センサーネットワーク

 部品各社は、IoT市場向けに、センサーと無線通信モジュールを組み合わせた無線センサーネットワークの提案に力を入れている。無線通信デバイスと高精度センサーを複合化することで、新たなシステム構築への提案を推進する。

 ソリューション例としては、工場の生産管理の「見える化」や医療/介護関連での「見守りセンシング」、エネルギー管理、建設現場の安全対策、トンネルや橋梁などの経年劣化に伴う健全度モニタリング、農作物栽培の遠隔管理、セキュリティシステム、照明制御などがある。