2020.11.20 事務機各社の4-9月 新型コロナ響き減収7-9月は回復基調 通期見通しは慎重

 事務機部門を主力に持つ各社の21年3月期第2四半期(20年4-9月)連結決算は、各国のロックダウンなどの影響を受け、売上高、利益とも大きく減少した。5月を底に回復傾向にはあるが、世界的に新型コロナ感染再拡大の懸念が強まっており、「コロナの影響拡大を想定し下方修正」(リコー)、「環境の好転に過度に依存しないレベルに設定」(コニカミノルタ)するなど、通期見通しを厳しく見ている。

 リコーは、第1四半期(1Q、4-6月)を底に回復し、第2四半期(2Q、7-9月)はほぼ見込み通りとなったものの、売上げで前年同期比23.4%減、営業損益は損失を計上した。主力のオフィスプリンティングはロックダウンや外出自粛などによる商談機会の減少、オフィス出社減などの影響を大きく受けたが、2Qの売上げは前年同期比18.6%減で1Qの同32.1%減より回復。営業利益も黒字転換した。

 注力分野のオフィスサービスは、前年のウインドウズ10への移行、消費税増税前の駆け込み需要の反動、顧客出力センターの閉鎖により減収となったが、営業利益は黒字(116億円)を確保した。

 通期連結業績見通しは「9月中旬から欧州を中心に再び感染が拡大し、先行き不透明となっている」(松石秀隆専務)ことから売上高、利益とも下方修正した。

 次期中期経営計画を前倒しで実施し改革を加速させるため、21年4月からカンパニー制を導入する。デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)への投資、デジタル人材の獲得・育成などにより「デジタルサービス会社への体制構築」(山下良則社長)を急ぐ。

 富士フイルムホールディングスは売上高が前年同期比11.9%減、営業利益で同38.6%減となったが、四半期純利益は富士ゼロックス完全子会社化などによる増益効果で2桁の増益。バイオ医薬品の製造・開発受託の業績好調を受け、通期業績予想を売上高、営業利益とも上方修正した。

 ドキュメントソリューションは、新型コロナの影響に加え、アジア通貨安で減収となった。営業利益も、コロナの影響で減益ながら、生産性向上や製品開発期間の短縮といった業務改革によって、厳しい環境下でも利益(283億円)を確保した。

 セイコーエプソンは全ての事業セグメントで売上げが前年実績を下回ったものの、7月以降は予想以上に回復。通期見通しを上方修正した。

 売上収益面では、先進国で主にインクジェットプリンタの在宅需要が増加したが、新興国では経済活動制限による需要減の影響を強く受けた。プロジェクタなどビジュアルコミュニケーション事業は、世界各地での各種イベントの延期・中止などが響いた。注力事業の一つ、ロボティクス事業は中国での案件獲得で大幅な販売増となった。

 「コロナの影響は残るものの主要事業・商品で予想以上に販売が回復」(小川恭範社長)したほか、為替レートを円安に見直し、通期予想を上方修正した。

 コニカミノルタの売上高は前年同期比で大幅なマイナスだったが、「5月をボトムとして各事業とも順調に回復」(畑野誠司常務執行役経理・財務担当)している。

 前年同期比の減収率は、1Qの28%から2Qには17%まで改善。利益面では19年度および今期に実施した構造改革効果などで「経費構造のスリム化が進み、黒字化に向けて進捗。2Qの営業利益は想定通り回復し、9月単月では黒字化」(畑野常務)した。

 通期見通しは「売上高は事業環境を考慮して環境の好転に過度に依存しないレベルに設定」(山名昌衛社長)。営業利益はオフィス構造改革費用を含め損失を見込んだが「売上げの回復以上に粗利額を改善し、下期の営業利益は214億円に向上」(山名社長)する見通しだ。

想定より回復早い

 キヤノンの20年12月期第3四半期(1-9月)連結決算は減収減益だったが、7月以降、回復基調を見せており、通期業績予想を上方修正した。在宅勤務やテレワークの広がりで家庭用のインクジェットプリンタが順調。「当初の想定よりも回復のペースが早く、為替も好転」(田中稔三副社長)と分析している。