2020.11.23 史上最大規模の気象計算を実現理研、富士通などがスパコン「富岳」を利用

「富岳」で史上最大規模の気象計算を実現

 国立環境研究所、理化学研究所、富士通、メトロ、東京大学の研究グループが、スーパーコンピュータ「富岳」を使用して、史上最大規模の気象計算を実現した。

 神戸市の理化学研究所計算科学研究センターに設置された富岳を使用した水平3.5キロメートルメッシュ、1024個のアンサンブルの計算は、世界の気象機関のアンサンブルデータ同化計算と比較して約500倍の規模となり、富岳の高い総合性能を実証した。

 気象情報は、気象観測の情報とコンピュータを使った数値シミュレーション、観測データとシミュレーションを数学的な手法を用いて、つなぎ合わせるデータ同化によって行われている。精度向上のためには観測データの利用効率を上げ、よりメッシュの細かい数値シミュレーションを実行し、より多くのアンサンブル計算を行う必要がある。計算だけでなく、シミュレーションが出力するデータサイズも爆発的に大きくなるため、これまでは限界があった。

 富岳は、スパコン「京」の後継機として14年から設計開発が開始され、先ごろ6月に続きスパコン世界ランキングの4部門で1位を獲得。単純なベンチマーク性能だけではなく、京と比較して最大100倍のアプリケーション実効性能を実現している。

 研究グループでは、アプリケーションを題材に、どのようなアルゴリズム、計算最適化を選択すれば、最新のスパコンの性能を引き出すことが可能であるかについて研究開発を進めてきた。

 最新のスパコンとシミュレーションモデル、データ同化システムが互いに協調しながら開発を進めることで、これまでより大規模な気象予報システムが実現可能であることを実証した。これにより、将来の気象予報・気候変動予測の精度向上が期待されている。

 同研究は、計算科学で最も栄誉ある賞の一つであるゴードン・ベル賞のファイナリストに選出。9-19日にオンライン開催されたスーパーコンピュータの国際学会SC20で内容が講演で紹介された。