2020.11.24 【空質商品特集】メーカー各社、ウイルス対策で空清機など増産
空気清浄機など空気質に関わる商品の関心が高まる
新型コロナウイルス感染症の拡大が世界的に加速する中で、ますます感染対策への意識が高まっている。室内の空気質への関心も、従来以上に深まっている。換気扇をはじめ、加湿器、空気清浄機、除菌脱臭機といった室内の空気質改善に寄与する商品群へ例年以上に注目が集まりそうだ。
冬場を迎え、新型コロナ感染症に加え、季節性インフルエンザの流行も懸念され、健康・衛生に関するニーズは高まる一方だ。
ウイルス対策として換気、加湿が有効な対策の一つとして挙がっていることから、こうした機能を持つ家電製品への関心は自然に高まっている。
年末商戦では例年、この時期から加湿器や空気清浄機の需要がピークを迎えるが、今年はさらに普及に弾みがつきそうで、今期に入って出荷台数は大きく伸びている。特に空気清浄機は前年度から大幅に伸長しており、各社は増産体制を強化するなど、積極的に市場ニーズに応えている。
空気清浄機市場動向
空気質に絡む商品の中で、早くから注目されていたのが空気清浄機だ。PM2.5が社会的な問題となった12年度には300万台近くに需要が急増し、空清機史上最高の出荷台数が記録された。20年度は、おそらく12年度の最高実績を上回るのではないかといわれている。
既に、20年度上期(4-9月)は前年を大きく上回る需要で推移し、日本電機工業会の出荷統計では台数ベースで前年同期比155.6%と大幅増となった。空気清浄機の需要ピークは例年下期(10月-翌年3月)となる。スギ花粉の飛散が増える2、3月に向けて、多くのユーザーが花粉対策にと購入するためだ。
通常、上期は空清機商戦の端境期であり、需要が急増することはなかったが、今年は異例の展開といえる。こうした動きを見ると、空気清浄機が今では〝必需品〟という位置付けに変わったという印象だ。普及率は現在45%弱だが、今年を機に50%以上に跳ね上がるという見方もある。
これから冬場は、エアコン暖房が普及する中、乾燥対策も重要となる。空気清浄機は長い歴史の中で、加湿機能を搭載した複合タイプの高付加価値商品の構成比が高まっており、現状でも空清機全体の大半を占め、乾燥対策としても注目される商品となる。
空質性能はもとより加湿性能を向上させるなど、各社は商品進化に力を入れており、下期以降も台数ベース、金額ベースとも堅調な販売に期待がかかる。コロナ禍が続き、自治体では医療・介護施設に導入補助金を出す動きも加速している。
空清機大手、積極的な増産対応
こうした流れに、空気清浄機メーカーの国内大手各社は増産体制を取った。シャープ、パナソニック、ダイキン工業の3社は商品供給に万全を期し、また高まる需要への対応に力を入れる。
ダイキン工業では、国内を含めグローバルで空清機需要が拡大する中、迅速に増産を決めた。同社では今まで生産は中国の格力などに委託していたが、今期はいよいよ自社のマレーシア工場に生産ラインを新設し、12月から15万台/年の生産能力で商品供給を図っていく。さらに現在、20万台/年に増やそうと計画を詰めているという。
日本でも滋賀製作所(滋賀県草津市)で来年3月をメドに15万台/年以上の生産ラインを新設する計画だ。
パナソニックは、空気清浄機や次亜塩素酸 空間除菌脱臭機「ジアイーノ」、衣類乾燥除湿機、加湿器など幅広い空質商品を取りそろえ、旺盛な需要に対応している。
中でも、除菌・ウイルス対策に効果的な「ジアイーノ」については、今年は引き合いが集中したことから、4月以降一時的に新規受注を止めていたが、生産体制を整備し、前年の3倍に生産能力を増強して9月下旬から販売を再開した。
空気清浄機市場トップのシャープでは、プラズマクラスター空気清浄機の幅広いラインアップで旺盛な需要に対応、新製品も投入して攻勢をかけている。同社ではタイ、中国(上海)に加え、上期からベトナム工場にもラインを新設して高まる需要に対応し、前年の1.5倍の生産体制で臨む。
一方、外資系や専業メーカーも新たに空気清浄機など、空気質関連製品を投入。新規参入する動きも加速しており、空気清浄機市場は活性化している。
乾燥シーズンで加湿器も需要増
今年は加湿器の需要が高まっている。例年オフシーズンとなる4月以降も、母数は少ないながらも前年を上回る出荷を記録し続けた。
下期に入り、本格的な乾燥シーズンに突入した。当初から需要は大幅に上がると予想されていたが、JEMAの統計では10月は19万台と前年同月から7割増えている。4-10月では31万8000台と5割増だ。
需要のピークは12月。そこに向けて出荷量も増える。メーカー側も需要を見越して増産対応などを進めている。足元で新型コロナの感染者が急増していることから、年明け以降も加湿器の需要が続きそうだ。
業務用の空間清浄機も需要増
家庭用に加え、業務用途の空間清浄に対する需要も高まっている。家庭用の空気清浄機を展開するパナソニックやシャープ、ダイキン工業など主要メーカーはオフィスやホテル、病院などの医療機関などに向けて大型の空気清浄機、除菌脱臭機の提案を加速。家電ベンチャーのトゥーコネクトは家庭用空気清浄機に加え、今後は業務用でも使える大型タイプも投入していく。
コロナ禍で、多くの人が行き来する空間を安全で快適にしていく要望はさらに高まるとみられ、各社は業務用途での製品提案にも力を入れていく。
5年前からオゾン除菌消臭に着目して、製品を開発、展開してきたマクセルは今年からオゾン除菌消臭器を家庭用と業務用に分類して製品を開発、本格的に法人向けの提案を始めた。オゾン除菌消臭器と空気清浄機を併用することで、より効果が高まることを訴求し、ホテルや病院、クリニック、オフィスなどへの展開を強化している。法人需要はさらに増えるとみられる。