2020.11.27 コロナ拡大、体温の報告・管理を一括化教育現場にも、静岡ガスなどシステム提供

生徒や保護者はアプリで朝の体温などを報告する教職員はパソコン上でデータを確認できる

教職員はパソコン上でデータを確認できる教職員はパソコン上でデータを確認できる

データが集まった教職員のパソコン画面データが集まった教職員のパソコン画面

 国内で新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、教育現場でも校内でのクラスターなどを防ぐためのシステムが活躍し始めている。主に静岡県中部から東部に都市ガスを供給する静岡ガス(静岡市駿河区)は、アプリ開発を手掛ける「リーバー」(茨城県つくば市)と協力し、県内の教育機関に体温や体調を一括管理できるシステム提供を開始。第1弾として、11月からICT(情報通信技術)教育に熱心な高校などが利用を始めた。

 日本ガス協会(東京都港区)によると、静岡ガスは、都市ガス販売量で3大都市圏への供給ガス会社に次ぐ有数の規模がある。

 高い知名度で導入を促進

 地域に根差した静岡ガスでは地域の課題解決や、生活の質の向上に役立つ事業の検討を進める中で、エネルギー供給などの面で接点があった教育現場に着目。コロナ禍で抱える課題を聞きつけ、今回の事業化に至ったという。知名度を生かして、システムの普及促進や現場での説明などを担う。

 一方、システムを開発したリーバーは17年に設立したベンチャー企業。医師に24時間いつでも相談ができるアプリ「リーバー」を中心に事業化。体温や体調報告をストレスチェックと組み合わせた企業向けのシステムも開発した。今回は学校向けに機能を特化した「LEBER for School(リーバー・フォー・スクール)」を提供する。

 リーバー・フォー・スクールは、生徒や保護者が専用のスマートフォンアプリで、朝の体温・体調や出欠席の情報を入力し、学校側に報告できる。家庭には、検温を促すプッシュ通知が毎朝、送られ、入力し忘れも防ぐ念の入れようだ。

 学校の教職員は、生徒の登校前に、家庭から提供された情報をパソコン上で一括して確認して、感染予防などに必要な対策を事前に徹底することができる。学校全体の健康状況をグラフ化し、集団解析などにも役立ち、「学校全体の動向が見えやすくなり、感染予防にもつながると期待している」(静岡ガス担当者)という。

 さらに、都道府県別の最近1週間の新規感染者数や、自治体別の学校発熱者の割合などを表示する機能も付属する。

 コロナ禍以降、文部科学省が定めるガイドラインなどでは、子どもたちの登校時には、学校側に検温や体調の把握を求めている。ただ、学校では検温結果や体調を確認した情報を書類で管理しているケースが多く、生徒が体調不良で欠席する場合でも、保護者や友人を通じて、学校に書類の提出を求める例もあったという。

 導入後、順次、利用を始めている静岡市駿河区の私立城南静岡高校と併設する同中学では実際、これまで毎朝の検温を義務付け、結果を書類で確認していた。このシステムの導入で、体調不良の生徒との接触を極力回避することができ、校内クラスターの発生防止などにも役立てる狙いだ。

 熱心なICT教育が背景の一つ

 教職員にとってもメリットがある。両校には生徒と教職員約700人が在籍し、毎朝の情報を手打ちでデータ化する作業などが、教職員の負担になっていたという。書類管理の手間が省け、生徒の健康状況やその変化をデータで把握しやすくなる。同高関係者は「紙ベースのやりとりがなくなったことで、負担感が減った。導入でコロナに対する生徒らの意識も高まり、リスクも減少しつつある」と期待を込める。

 同高には、普通科のほかICT科があり、IT設備の豊富な学習環境が整備されている。生徒は本格的なオンラインショッピングモールの運営などを手掛け、実践的なICTビジネスの経験を積むことができる、県内随一のICT教育校だ。そんな背景が、今回のシステム導入を後押ししたという。

 利用料は一人月10円で、1カ月単位で利用できる。静岡ガスでは今後、県内の小中高校や幼稚園、保育園などにも導入提案を続けていく。既に数校が前向きに検討しているという。

 静岡ガス担当者は「県内では、このシステムが教育機関で標準化されるくらいまでに普及させていきたい」と話している。