2020.12.01 豪雪地で太陽光発電生活デルタ電子が情報発信、研究所開設へ
研究所が開設する赤穂エナジーパーク
電源機器製造のデルタ電子(東京都港区)は、太陽光発電の本格的な普及を見据え、新たな製品開発などのアイデアに生かすため、再生可能エネルギーに支えられる人々の暮らしぶりの変化について議論する「太陽光生活研究所」を21年1月に立ち上げる。第1弾の関連事業として、豪雪地に移住した雑誌編集者と協力。太陽光発電をしながら、自給自足的に過ごす生活を情報発信するプロジェクトを始動している。
研究所は、同社が運営するメガソーラー「赤穂エナジーパーク」(兵庫県赤穂市、出力4MW)が建設5周年を迎えることを記念し、パーク内に開設する。同社のパワーコンディショナや蓄電池の新製品テストなどに活用してきたが、今回、敷地内にサステナブルな暮らし方で起こる変化などを検討する場として研究所を発足。成果を、同社が目指す太陽光ソリューションの開発などに役立てていく。
設置困難だった依頼が縁に
こうした発想で、既に動き始めているのが、「長野・飯山太陽光発電プロジェクト」。20年春に、神奈川県・湘南から長野県北部・飯山市の山間部に移住した雑誌編集者、尾日向梨沙さんが、同社に太陽光発電システム設置を依頼したのが、大きなきっかけだ。
尾日向さん方は標高約450メートルで、積雪4メートル近くに達する国内有数の豪雪地。積もった雪でモジュールなどが破損する可能性があるため、設置が難しかった。だが、同社が架台メーカーと共同で、設置工法などを工夫し、新たな手法を開発して導入にこぎつけた。
尾日向さんは1980年生まれ。東京で生まれ育ち、大学卒業後の13年間、スキー専門誌などの編集に携わり、編集長も務めた。その後、フリーランスとして、雪の文化や雪国の暮らしなどに着目した雑誌「Stuben Magazine」を創刊し、発刊を続けている。こうしたキャリアに同社側が注目し、太陽光発電生活をエッセー風に執筆し、発信することになった。
飯山市では、生活にスキーを取り込み、自然に寄り添うライフスタイルを実践している。20年10月に、太陽光発電に、充放電できるハイブリッド蓄電池などを組み合わせたシステムを設置。「雪国飯山ソーラー発電所」と命名し、可能な限り電気を自給自足する生活を始めた。パネルは16枚で出力計5.44kW。好天時なら、住宅の使用電力は、ほぼ賄えるという。
「生活者視点」でつづるエッセー
ナチュラルライフを続ける尾日向さんだが、太陽光発電による生活は初めてだ。「どんなに微力でも、自己満足でも、私は地球への負荷を少しでも配慮して人間らしい暮らしを送りたい」。初回となるエッセーで、胸の内を記している。
プロジェクトは、尾日向さん方にシステムの設置検討を進めた20年7月から始まり、22年6月までの2年間続ける予定。同社は、尾日向さん方で、5分ごとの発電量や蓄電池の充放電量などのモニタリングも実施する。
同社の担当者は「太陽光発電にとって雪国は、未開拓なエリア。プロジェクトを通じて、雪国であるべき住宅太陽光発電の姿を見つめていきたい。尾日向さんには、生活者の視点で書き続けてほしい」と話している。
尾日向さんのエッセーは「雪国とおひさまの物語」と題して、開設する太陽光生活研究所ホームページに21年1月ごろから随時掲載され、閲覧できるようになる。