2020.12.04 天然ガス、コロナ後の需要回復の行方INPEX、北関東でパイプライン増強

天然ガスを輸送するINPEXのパイプライン。北関東、首都圏などに広がる

INPEXの直江津LNG基地INPEXの直江津LNG基地

新潟県長岡市の長岡プラント。南長岡ガス田から生産された天然ガスを処理して、パイプラインに供給する新潟県長岡市の長岡プラント。南長岡ガス田から生産された天然ガスを処理して、パイプラインに供給する

INPEXの天然ガスパイプライン網INPEXの天然ガスパイプライン網

複線化して増強する両毛ライン複線化して増強する両毛ライン

 石油開発の国内最大手、国際石油開発帝石(INPEX)は、北関東地方の天然ガス需要がさらに伸びるとして、天然ガス輸送パイプライン網の増強を進める。埼玉、群馬、栃木の各県に及ぶ「両毛ライン」(全長89キロメートル)のうち約6キロメートルを複線化することを決定。さらに、新潟県から群馬県に至る「新東京ライン」(全長213キロメートル)の延長などに向けて事前調査に入る。

 INPEXは、1960年代から天然ガス輸送のためのパイプライン網の整備に取り組み、現在、新潟県や首都圏など1都9県に広がり、その総延長は約1500キロメートルに達する。天然ガス鉱業会(東京都千代田区)によると、国内で最大規模の天然ガスパイプライン網だ。

 停滞前の需要、22年度に回復想定

 ネットワークの要衝である新潟県上越市の直江津港には、LNG(液化天然ガス)受け入れ基地「直江津LNG基地」が、13年12月から操業を始め、輸入したLNGを再気化するなどしてパイプラインに送り出している。また、国内最大級の埋蔵量を誇る南長岡ガス田(新潟県長岡市)などから生産されたガスも、プラントで処理された後にパイプラインを通じて沿線の都市ガス事業者などに供給され、各需要家らに販売されている。

 今回の増強は、16年10月に新潟県糸魚川市と富山市を結ぶ「富山ライン」(全長103キロメートル)が竣工して以来となる。

 狙いは、北関東地方への「需要増に対して供給体制を整える」(INPEX広報グループ)ためだ。北関東の需要家には大規模な工場なども多く、「コロナの影響で一時的に、需要は停滞しているものの、将来的に引き続き伸びが見込める地域」(同)とする。

 21年度まではコロナの影響を引きずるが、22年度にはコロナ前の19年度の需要レベルに回復すると想定。それ以降は、さらに需要が拡大していくと見込む。

 CO₂排出が少ない燃料を安定供給

 両毛ラインは1974年に地元の両毛ガス事業協同組合が建設。2004年にINPEXが取得して以降、運営、管理をしている。同ラインからは、地元の伊勢崎ガス(群馬県伊勢崎市)、太田都市ガス(群馬県太田市)、足利ガス(栃木県足利市)など6社に天然ガスを卸している。

 既に着工しているのが、両毛ラインの栃木県佐野市から群馬県館林市までの区間約6キロメートル。パイプラインを複線化することで、おおよそ倍近い供給量の増加が見込める。22年末からガスを通して使用する計画だ。投資額は非公表。

 また、両毛ラインの埼玉県上里町から同県本庄市の区間約6キロメートルについても複線化を見据えて、計画策定のための事前調査に入る。

 さらに、新東京ラインを、群馬県藤岡市から埼玉県本庄市の区間約16キロメートルを延長するための調査も始めるという。こちらも需要増への対応が、大きな理由だ。

 事前調査は21年3月まで、現地の土壌調査や測量を実施し、具体的にどの場所にパイプを通すかや、そのために必要な工事内容などについて、計画策定のために検討を進める。それを踏まえて、21年春ごろに計画決定し、着工へと移行する見通しだ。

 同社は「他の化石燃料に比べて、二酸化炭素の排出が少ない天然ガスをより多くの皆様に安心して安定的にお使い頂けるよう努力する」としている。