2020.12.11 省エネ、新エネの知見、農山漁村にもゼロエミへNEDO・経産省・農水省が連携セミナー
千葉エコ・エネルギーが、ソーラーシェアリングで運営する農場(千葉市緑区)
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などが主催するセミナー「農山漁村の未来探訪~エネルギーと資源の分散システムが切り拓く新たな価値~」が11日、オンラインで開かれた。国が50年のカーボンニュートラル実現を目標に掲げる中、NEDOの技術や知見を農林水産分野でも脱炭素化に生かすため、農林水産省や経済産業省と進める連携などが紹介された。
国が20年1月に、環境、エネルギー分野の技術革新を促進するために策定した「革新的環境イノベーション戦略」では、5本柱の一つとして、「農林水産業・吸収源」が位置付けられ、具体的には再エネの活用やスマート農林水産業などが明記された。
こうした背景で、NEDOは20年4月に技術戦略研究センター(川崎市幸区)内に、両省と連携を深める「ゼロエミ農水連携ユニット」を発足。3者が連携した施策提案に向けた調査などを始めている。
セミナーでは、NEDO技術戦略研究センターで連携を担当する山本真也氏が、取り組み内容を講演した。
山本氏は、全国の農山漁村について、現場ではロボットやAI(人工知能)などを活用したスマート農業化が進んでいる一方、抱える社会問題として、大規模な自然災害による甚大な被害に触れて、「温室効果ガス(GHG)削減に加え、エネルギー資源の多様化、分散システムの構築、地産地消の実現が急務だ」と指摘した。
また、世界のGHG排出量490億トンのうち、農業や林業などでの排出は全体の4分の1を占めており、「削減した場合のインパクトが非常に大きい」(山本氏)という。ただ、国内に限れば、農林業分野は全体の約4%にとどまっていることから、山本氏は「国際協調が重要であり、日本の技術を他国へスムーズに移転することで、農林水産全体のGHG削減への貢献が期待できる」と強調した。
続いて開かれたパネルディスカッションには、NEDOや両省の担当者のほか、エネルギー企業から専門家らが参加した。
農業と太陽光発電を一つの土地で同時に行うソーラーシェアリングを実践している千葉エコ・エネルギー(千葉市稲毛区)の馬上丈司社長は、「農業を化石燃料から解放していくのが取り組みのテーマだ」と語った。国内の農業に投入されるエネルギーの95%が化石燃料の直接燃焼に依存しているという。
馬上氏は、国内の農山漁村の強みとして、都市部と近接地にも広がっていることや、世代交代の時期を迎え、新しい技術や仕掛けづくりがしやすい環境にあることなどを挙げた。
一方で、関西電力の石田文章氏は「農村部でスマートコミュニティ化が難しい大きな要因は、エネルギーの一つ一つの需要が小さく、点在していることだ」と課題も指摘。そのうえで、「点在している小さなものをまとめあげて、調整し、バランスを取ることに、(日本が)たけている可能性がある」と語った。
閉会時には、NEDO技術戦略研究センターの西村秀隆次長があいさつに立ち、脱炭素社会の実現をターゲットとした連携について、「NEDOがこれまで取り組んできた省エネや新エネ、デジタル技術、バイオ技術の知見が、実は農林水産分野にも、もっともっと活用していただけるのではないか」と期待を込めた。