2021.01.22 「東京産水力発電」販売で地産地消エネオス、再エネ小売りメニューを新設へ
多摩川第一発電所
石油元売り最大手のENEOS(エネオス)は、東京都が持つ多摩川水系の3カ所の水力発電所で発電された電力を販売する、と発表した。都内の工場事業者などに販売する新しいメニューを4月から設けて、再生可能エネルギーの地産地消に取り組むという。
水力発電は、太陽光や風力発電などと比べ、気象条件の影響を受けにくい再エネとされ、発電量を制御しやすく、安定的に発電できるメリットがある。
都交通局が20年11月から、都が管理する大規模水力発電所3カ所の電力を一括して売却するため、公募型プロポーザル方式を実施。提案があった5社の中から、エネオスが売却先として選定された。
売却期間は21年4月-24年3月までの3年間。19年度実績で3発電所の合計販売電力量は約1億1700万kWhあり、一般家庭の3万5000世帯分の使用量に相当するという。
エネオスでは、グループ内で所有する水力発電所から供給される電力を販売することはあったが、グループ外から水力発電を調達するのは初めてという。
同社は、家庭向けを中心とした電力小売りブランド「ENEOSでんき」とは別に、企業向けにも小売りし、RE100加盟企業の増加などを踏まえて、19年度からは企業向け再エネ電気の販売も始めている。
今回の調達が決まり、東京都内の工場事業者などの高圧需要家を対象にして、水力発電所由来の電気を活用した再エネメニューも新設し販売することにした。21年度からの3年間で計約3億kWhの販売を目指す。エネオス広報グループは「今後も機会があれば地産地消の枠組みを検討していきたい」と話す。
大規模水力が集中する多摩川水系
東京都が管理する大規模な水力発電所が集中するのが、多摩川水系だ。奥多摩湖(東京都奥多摩町)から流れ出た水は、併設する多摩川第一(同町、最大出力1万9000kW)や、白丸(同町、同1100kW)、多摩川第三(東京都青梅市、同1万6400kW)の3発電所で発電に利用されている。都管理とは別に、民間企業が運営する氷川発電所(東京都奥多摩町、同8200kW)もある。
1957年12月に都として最初の水力発電所、多摩川第一が稼働して以降は、発電した電力は東京電力に売却してきた。2013年度からは新電力が価格競争入札で落札した。
再エネの関心の高まりを受けて、「東京産水力発電の環境価値」(東京都交通局)を広くPRしようと、都が今回初めて、企業側から提案を募る公募型プロポーザル方式による選定を実施した。水力発電による電力は、エネオスを介して、都内の都営バス全事業所20カ所にも供給されることになっているという。
同局車両電気部は「東京産水力発電のほとんどは、都が管理するもので、CO₂フリーの電源として最大限に有効活用してもらいたい。都内で再エネを広めるきっかけの一つにしたい」と話している。