2021.02.04 【FA機器・産業ロボット用部品技術特集】ルネサスが モーター制御用マイコン「RA6T」グループ提案AIによるモーターシステムの予知保全を実現

モーター制御用マイコン「RA6T1」グループ

【はじめに】 

 FA・産業機器のスマート化が急速に進んでいる。新型コロナウイルス感染症が拡大し、工場内でも密を避け、積極的に自動化を進める企業も増加している。FA機器や産業機器をスマート化するため、エッジ側にAIの機能を備えた装置も拡大。FA・産業機器に組み込まれたモーターの動きを制御・監視することで、システム全体のダウンタイムを減らす予知保全に活用されるケースが増えている。

 ルネサスエレクトロニクスは産業オートメーション向けにモーター制御用マイコン「RA6T1」グループを提案している。モーター制御向けにPWMタイマーやアナログ機能を最適化。Google TensorFlow Liteを活用することによりモーターシステムの予知保全を実現する。

【モーター制御用マイコン「RA6T1」グループ】

 RA6T1グループはArm Cortex-M4コアを搭載し、最大動作周波数は120MHz。高機能なPWMタイマーやAC-DCコンバータなどの周辺機能により、最大2個のブラシレスDC(BLDC)モーターを同時にかつ高精度に制御することができる。

 また、内蔵のプログラマブルゲインアンプ(PGA)を使用することにより、BOMコストの削減が可能。産業用ACドライブやソーラーインバータ、空調システム(HVAC)、家電製品など幅広い製品の制御に最適だ。

 産業機器のスマート化が進み複雑化する一方、メーカー各社はモーター性能を満たすため、増大し続けるBOMコストに苦慮している。RA6T1はArmコアを搭載したRAファミリーの柔軟性とルネサスが長年蓄積してきたモーター制御のノウハウを組み合わせて開発した。

【AIによるエンドポイント予知保全にも対応】

 RA6T1上でマシンラーニング(ML)推論を行うTinyML用途向けのGoogle TensorFlow Lite for Microcontrollersフレームワークを使用することにより、インテリジェントで使いやすく、コスト効率の高いセンサーレスな予知保全システムの実現が可能。モーターシステムの故障につながるような異常をより早く正確に検知することが可能になるため、予知保全プロセスを改善することにより、メンテナンス費用の削減につなげることができる。

【RA6T1用Renesas Solution Starter Kit(RSSK)】

 ルネサスはRA6T1のモーター制御ソリューションであるRenesas Solution Starter Kit(RSSK)も提供する。RSSKを使用することで、モーター制御のデバッグを容易化できるだけでなく、モーター制御設計の評価を迅速に開始し、リアルタイム分析とチューニングを実施できるため、開発期間を短縮することができる。

 RSSKにはRA6T1のCPUカードと24V~48V対応のインバータボードおよび24V/0.42AのBLDCモーターが含まれており、ルネサスのホームページより入手可能なモーター制御開発支援ツール(Renesas Motor Workbench2.0)およびFlexible Software Package(FSP)に対応した3シャント方式のセンサーレスベクトル制御のサンプルプログラムを使用することにより、容易にモーターを動作させることができる。

【最後に】

 AIや機械学習の高度化は産業機器のスマート化を加速し、予知保全を次のレベルに引き上げようとしている。Googleとルネサスの協業は産業用IoTへのAI導入を後押しする。ルネサスは今後もモーター制御分野の企業との協業を進め、パートナーエコシステムを拡大していく。