2021.02.19 【5Gがくる】<30>5GにとってWi-Fi6は敵か、味方か? ④

 前回までは、地域の通信事業者などが電柱等に設置する「ローカル5G基地局」と、公道や建物越しに基地局と〝固定通信〟の形態で接続し、Wi-Fi6でユーザー端末とつなぐ「ローカル5G&Wi-Fi6ルーター」が増えると、小規模工場のデジタル化をはじめ、小規模オフィスやテレワークでの4K/8K、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)サービスを利用したニューノーマルなビジネスが進むというシナリオを見てきた。

他者土地利用でも

 今回は同じように他者の土地を利用する場合でも、固定通信とWi-Fi6では解決できないケースを見てみたい。具体的には自己の土地内にローカル5G基地局を立て、そのアンテナから他者の建物や土地越しに直接、電波をユーザー端末へ飛ばしたいケースだ。

 例えば、大学のキャンパスや大きな病院の敷地内に、公道や河川を挟んで幾つかの棟が立っている場合がある。仮に、そのような大学や病院が自らの敷地内にローカル5G基地局を設置し、4K/8K超高精細映像による教育や医療を始めるとしよう。

 そうした場合は、敷地内を移動しながら利用する環境が必要になる。当然、教員や学生、医師や看護師がタブレットやスマートフォンを手にしながら、公道や橋を渡って棟から棟へ移動するケースも考慮しなければならない。しかし、公道や河川は〝他者の土地〟だから「〝移動通信〟の形態で電波を公道や河川越しに飛ばすことは許さぬ」と言われると困ってしまう。

他者の建物や土地越しに電波をユーザー端末へ飛ばしたいケース

 また、こういう例もある。商店街などをまとめる組合などの団体が、顧客囲い込みのための新たなデジタルサービスを始めるとしよう。商店街の街灯にローカル5G基地局を設置し、買い物客に貸し出したタブレットに商品の魅力を効果的に伝える4K/8K超高精細映像などを配信するARサービスを提供するケースだ。

 この場合、組合などに加入している店舗や店舗を挟む公道は〝他者の土地〟だから「〝移動通信〟で電波を店舗や公道越しに飛ばすことは許さぬ」と言われると、買い物客は商店街を移動しながらサービスを利用できなくなってしまう。この場合、Wi-Fi6でユーザー端末とつなぐといっても、屋外では周波数の使用制限があるほか、他システムとの電波干渉を受けやすいため、映像品質が不安定になってしまう。

認める例外を追加

 そこで、「ローカル5G導入に関するガイドライン」(総務省による策定・公表)において、「他者土地利用」の場合であっても一定の条件下においては、ローカル5Gを〝移動通信〟として利用することを認める例外が昨年12月の改定で追加された。

 その条件とは「大学のキャンパスや病院等の自己土地周辺にある狭域の他者土地について、別の者がローカル5Gを開設する可能性が極めて低い場合」と「近隣の土地の所有者が加入する団体によって、加入者の土地において一体的に業務が行われる場合」となっている。もちろん免許の申請に当たっては、個々のケースにおいて相談した方がよいだろう。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉