2021.02.24 ビックカメラ経営企画部事業開発室の齋藤眞一朗担当部長に聞くスタートアップスクエア開設「新しい体験の場」として定着へ

齋藤 担当部長

 ビックカメラが、集客力のある都市型店舗の売り場づくりで、「新たな一手」に乗り出した。2月19日、新宿西口店(東京都新宿区)4階のエスカレータ脇のメーンとも言える場所に、スタートアップ企業の新商品を展示する「START UP SQUARE(スタートアップスクエア)」を開設。常設コーナーとして、8社・10商品をまずは展示した。今後も企業や商品を入れ替え、スタートアップの発想力を生かした商品群で「新しい体験の場」として定着させたい考えだ。コーナー設置の責任者である、経営企画部事業開発室の齋藤眞一朗担当部長に話を聞いた。

 -スタートアップスクエアの設置はいつから検討していましたか。

 齋藤担当部長 社内では数年前から検討していた。(体験型店舗の)「b8ta(ベータ)」を4年前に米国で視察したことがあり、「これは量販店がやるべきことだ」と強く思った。

 スタートアップスクエアの設置で当社と新たに取引することになった商品もある。当初は店舗で購入できる商品という前提でスタートアップに声をかけていたが、集まりにくかったため、店頭購入できなくても良いようにした。量販店では買えるのが当たり前。「展示だけ」という商品は当社として初めての試みになる。

 -なぜこのタイミングだったのでしょうか。

 齋藤担当部長 新商品と言えば、販売されているものがこれまでは当たり前だった。しかし、店頭購入できない商品であっても、お客さまがどれぐらいリアルの場で体験することを求めているかを理解したいと思っていた。

 同時に、当社にとってはメーカーも大事な存在。メーカーにもプラスになるコーナーになることを考えた。それらの実現を目指し、参加するスタートアップを募っていた。

 時間はかかったが、スタートアップを集められ、場所もうまく確保できたので、このタイミングで設置することになった。

 -店頭購入できない商品を展示するとは、思い切りましたね。

 齋藤担当部長 店頭では購入できないが、メーカーの直販サイトに飛べるQRコードを商品説明に付けるなど、気に入ったお客さまがその場で購入できる仕組みは整えた。

 当社の売上げになるわけではないが、メーカーと協力し、購入したお客さまのデータを分析できるようにしている。

 -スタートアップはどのように集めましたか。

 齋藤担当部長 当社はスタートアップの「アクセラレータープログラム」を実施しており、そこで培ったスタートアップとの関係を生かした。(スタートアップの発展に注力している)「KDDI∞Labo(ムゲンラボ)」にも協力してもらった。

 今回、スタートアップ8社を集めたが、そのうち5社はKDDI∞Laboの協力を得ている。

 -展示企業のマーケティングにも生かせる仕組みを導入していますか。

 齋藤担当部長 3月15日までは実証実験といった位置づけで、販売員にピンマイクを付け、許可を得られたお客さまに限り音声を録音する。今後はカメラを設置しお客さまの滞在時間などを記録できるようにしたり、商品ごとに「いいね!」ボタンを設置したりし、お客さまの反応をつかめるようにすることも検討している。

 -他店舗への展開は。

 齋藤担当部長 新宿西口店は、ビック店舗の中でも白物家電やPCの売上げが多い店舗だ。新宿駅というターミナル駅にも近く、お客さまの利用が非常に多い。新しい取り組みを行うにはうってつけの店舗だと思っている。

 ここでうまく回せることが証明できれば、それこそ有楽町店といった当社の代表的な店舗への展開にもつなげていける。2-3カ月で商品は入れ替えていく予定で、パネルだけといったコンセプト展示は避け、実際に商品が体験できることを重視していく。

 現状、IoTやスマートホームなどに近い特徴を持つ商品を集めているが、今後はサービス展示なども検討していく必要はあるかもしれない。