2021.03.04 【コネクタ技術特集】 日本航空電子工業 USB Type-C®コネクタ

 2014年8月に規格化されたUSB Type-Cは、近年のデータ伝送速度の高速化や急速充電の要求に対応するために、フォームファクターを継承しながら規格のアップデートが進んでいる。当社は規格策定当初からUSB-IFのワーキンググループに参画しコネクタとケーブルハーネスの製品化を行っており、本稿では2019年8月に規格化された最新のUSB4™規格への対応を含めて、コネクタの技術動向を紹介する。

 ※USB4™,USB Type-C®は、USB-IF(USB Implementers Forum, Inc.)の商標。

◆USB Type-C規格について

 コネクタとケーブルハーネスに関する仕様は主に以下のようなものがある。

 ・0.5mm号ピッチ12極×上下2列の、最大24極のコネクタ。

 ・表裏極性が無く、リバーシブル嵌合に対応。

 ・最大100Wの電力供給(Power Delivery規格)に対応。

 ・最大20Gbpsの伝送に対応する高速差動レーンを4レーン内蔵(注1)。

 (注1)USB信号は双方向通信のため、1chで2レーン使用する。

 ・Thunderbolt™規格でも、USB Type-C規格のコネクタとケーブルハーネスを採用。

 ・高速差動レーンを使ってDisplayPort規格の伝送も可能(DP Alt-Mode)。

 ※Thunderbolt™はIntel Corporationの商標。

◆Type-Cコネクタの構造

 Type-Cコネクタは0.5mmピッチというコンパクトな構造の中で、前述の高速通信と電力供給に加えて、強度・耐久性・操作性など様々な要求を満足することが必要になる。

◆Type-Cケーブルハーネスの構造

 Type-C規格では、伝送規格や定格電流、さらにはケーブルハーネス両端に接続されるコネクタの組み合わせにより、様々なグレードがある。規格で定められた外形寸法を満たすためには、経験則上、ケーブル外径を5mm以下に抑える必要がある。表からも分かる通り、USB 3.2やUSB4といった高速伝送規格に対応するためには高速差動レーンを8本組み込む必要があり、高度なケーブル設計技術や結線技術が求められる。

 なお多数のワイヤを0.5mm信号ピッチのプラグコネクタに直接結線することは困難であるため、いったんインターポーザ基板(パドルカードと称する)をプラグコネクタに装着し、パドルカード上にワイヤ結線する手法が一般的である。

◆Type-C製品の主な特長

(1)接続信頼性

 USB Type-Cコネクタは、プラグコネクタの信号コンタクトにばね性を持たせている。当社のプラグコネクタでは、十分なシミュレーション検証を行い、0.5mm信号ピッチという省スペースでも問題無く機能し、10,000回の挿抜への耐久性も持たせたばね構造を採用している。

 また、パドルカードを装着する際の信号コンタクトの変形を防止するため、プラグコネクタの嵌合部に保護キャップを装着した状態で納入している。

 また嵌合保持力を持たせるため、レセプタクルコネクタのミッドプレートと、プラグコネクタのサイドラッチのばね構造および形状を最適化させ、良好な保持力と嵌合耐久性を両立させている。

 さらに、インターフェイスコネクタでは煽りに対する強度確保が必須である。当社レセプタクルコネクタでは、外殻シェル上にさらに金属補強部品を装着して、基板への固定を強化して煽り強度を向上させた製品も提供している。

(2)豊富なコネクタバリエーション

 レセプタクルコネクタは、お客さまの様々な実装形態に対応できるよう、以下のように多くの製品バリエーションをラインアップしている。防水タイプについては、当社独自の止水処理を施すことでポッティングを不要としたレセプタクルコネクタも用意している。

<レセプタクルコネクタのバリエーション>

 ・基板表面から嵌合間口センターまでの高さのバリエーション

 ・信号コンタクトの実装形態のバリエーション

 ・基板面に対する嵌合方向のバリエーション

 ・対応する伝送規格のバリエーション

 ・防水機能有無のバリエーション

(3)最大5Aの電力供給対応

 5A通電時にも30℃以上の温度上昇が発生しないよう、当社のレセプタクル・プラグ両コネクタの信号端子には導電率の高い材料を選定している。

(4)高速伝送への対応

 当社では伝送シミュレーション技術と伝送評価体制を駆使して、コネクタとケーブルハーネスの設計を行っている。19年8月にリリースされた40GbpsのUSB4規格は、従来最速であったUSB 3.2 Gen2規格の2倍の伝送速度に対応するもので、要求される諸性能も厳しいものであった。当社の従来コネクタとケーブルハーネスではこのUSB4規格を満足することが出来なかったため、昨年にUSB4規格に対応する新規のコネクタとケーブルハーネスを開発するに至った。USB4コネクタでは、共振周波数を変える工夫や、信号コンタクトの損失を小さく抑える構造を取り入れた。ケーブルハーネスでは、ケーブル構成を見直して、より高い周波数でも安定した性能を実現した。これらの対策により、コネクタ、ケーブルハーネスともにUSB4認証を取得することができた。

◆認証取得

 当社はUSB-IFでの委員会活動に積極的に参画し、規格に準拠するコネクタとケーブルハーネスを開発してきた。お客さまに安心してご使用頂けるよう、開発した製品は可能な限り規格認証を取得して、性能の保証を行っている。

◆おわりに

 今後PCを中心として通信の高速がさらに進んでいくと考えられる。USB規格もそれに呼応して一層の高速化が進んでいくが、当社は進化を続ける規格に早期に対応し、規格準拠製品を開発していく。

 またType-Cはその利便性から、今後様々な機器や市場に浸透していくと期待される。多様化していく市場ニーズを予測し、提案できるように引き続き先行開発に取り組んでいく。

日本航空電子工業(株)
https://www.jae.com