2021.03.09 【照明総合特集】「ライティング・フェア2021」開催に向けて日本照明工業会(JLMA)平岡敏行会長に聞く

平岡 会長

あかりの価値を提案

 日本照明工業会(JLMA)が主催する照明関連の国際的な展示会「ライティング・フェア2021」が、東京・有明の東京ビッグサイトで9日から12日までの会期で開幕する。オンラインによる〝バーチャル〟な展示会へのシフトが進む中、〝リアル〟にこだわり、あかりの質や付加価値を体感してもらうことを目指す。

 コロナ禍での開催であるため、各ブースでは万全の感染症予防策を実施している。ただ、東京五輪・パラリンピックの関係から利用できる会場が制限された上、コロナの影響も加わり、前回(19年開催)からは出展社数は大幅に減少。

 そうした中でも、IoTやAI(人工知能)などを駆使するCSL(コネクテッド・スマート・ライティング)と、人に寄り添うあかりを目指すHCL(ヒューマン・セントリック・ライティング)を軸にしたあかりの価値をアピールしていく。開催に向けて、平岡敏行会長に話を聞いた。

 -コロナ禍におけるリアルの展示会開催は、難しい判断でもありましたね。

 平岡会長 確かに難しい判断ではあったが、リアルの展示会にはやはり良いところが多くある。オンライン上であかりを見たとしても、実際に体感するのとではだいぶ印象が変わってくる。

 この一年で出展各社も様々なシーンで感染症予防策に取り組んできている。今回もソーシャルディスタンスを確保したり、出入り口を一本化したり、入場制限を設けたりと感染拡大防止の取り組みはしっかりと実施して臨んでいる。

 -展示会のテーマは。

CSLとHCLアピール

 平岡会長 CSL&HCLだ。照明のこれからの方向性として打ち出しているものだが、現状、一般的にはもちろん、メーカーに対しても認知が十分だとは言えない。業界としての方向感をもっと示していかなければならない。

 工業会のブースではCSL&HCLのコンセプトを動画で紹介している。ほかにも重要度が高まっているエリア防災照明やG13口金直管LEDランプの安全規格なども紹介している。

 初日の9日には、お笑いコンビ「パックンマックン」が会場を訪れ、出展している7社のブースを取材し会場を盛り上げる。取材した動画は工業会のサイトにアップし、さらなる来場促進にもつなげる狙いだ。

 -CSL&HCLを重視する理由は。

 平岡会長 今後、日本の人口は減少していく。それは当然、照明の需要にも影響してくる。そうなると、付加価値のあるあかりへの置き換えが業界としては重要になってくる。

 工業会としては、これまでフロー(メーカー出荷)やストック(既設照明)のLED化率は公表してきたが、4月からはCSL&HCL化率も新たに公表することを決めた。CSL&HCL化率は現状7-8%といったところだが、5GやAIなどが社会に浸透することで、照明も変わってくることが予想される。そうした中、CSL&HCLがより重要になるため、意識を高めるためにもCSL&HCL化率を公表していく。

 -リアル開催の一方で、基調講演やセミナーはオンラインで開催しますね。

 平岡会長 事前に収録しており、誰もがいつでも視聴できるようにしている。会場にあるラウンジのモニターにも映像を流し、会場でも見られるようにしている。会場に来られない方でも照明の最新トレンドや情報を得られるようにしている。

 -どのような方に来場してもらいたいと考えていますか。

 平岡会長 コロナ禍でのリアル開催となるため、最新の照明技術やあかりのトレンドなどに関し、本当に興味のある方が来場してくるのではないかと思っている。そういう意味で、仮に来場人数が少なかったとしても、中身のある展示会になるのではないかと期待している。

 -照明市場の見通しは。

 平岡会長 20年度は、前半から後半にかけて市場が回復してきている。こうした流れが続けば、21年度は今年度よりも市場は良くなるだろう。半面、新型コロナの状況もあって市場環境が見通しにくい上、19年度の水準まで回復するかというと、そこまではいかないのではないかとみている。

 工業会としては、業界の成長戦略である「ライティング・ビジョン2030」の達成に向けて、今後の方向感を示していく必要がある。これまでにフローでほぼ100%、ストックで50%までLED化することができた。ここまではビジョンで示した計画通りに進んでいると言えよう。ただ、ストックは、50%を超えてからLED化のスピードが鈍化するとみている。

 しかし、スピードが鈍ったとしても、LEDに置き換えられる既設照明が市場にはまだ50%は残っていることになる。

 そのため、全体的な照明需要は、人口減少などで緩やかに落ちていく傾向は続くだろうが、急激に落ち込むことはないはずだ。初期のLEDから最新のLEDに交換する需要も出てきている。

 IoTやAIが当たり前となることで、CSL&HCLの必要性はこれまで以上に高まってくるはずだ。今後はビジネス形態が変わってくることも予想されるため、工業会としても、30年に向けて様々な施策を検討していかなければならない。ビジョンの改訂にも着手し始めており、改訂版は1年後に発表する予定だ。