2021.03.17 脱炭素へ、「顔の見える」トップメッセージ環境省、企業や自治体の20人の動画公開
専用サイトのトップ画面のデザインに採用された植物の芽吹く姿。カーボンニュートラルの実現に向けて、取り組みも少しづつ成長を続けている
環境省は、50年カーボンニュートラルの実現に向けて、脱炭素化の取り組みを強めている企業や自治体のトップのメッセージを収録した動画公開を始めた。企業などの間では、国際的な潮流を受けて、脱炭素経営の舵取りが重要さを増す。計20人が、取り組む理由やメリット、脱炭素への思いなどを語っている。
公開されたのは、小野薬品工業や積水化学工業、第一生命保険など企業のトップ10人のほか、長野県や京都市、熊本市など自治体の首長10人。それぞれ3分程度にメッセージがまとめられている。
環境省では、50年ゼロカーボンニュートラルを目指すうえで、政府以外の重要なプレイヤーとして、企業と自治体に着目。積極的に取り組む組織からトップ20人を選定し、カメラを前にメッセージを語ってもらっている。「顔が見える状態で、実際に語ってもらうことで、思いが直接、伝わる」(環境省地球温暖化対策課)利点を生かしたコンテンツを目指しているという。
企業では、国際的なESG投資の広がりなどを受けて、脱炭素経営の必要性が求められるようになっている。こうした指針として広がっているのが、三つの国際的なイニシアチブだ。
事業で使用する電気を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的な環境イニシアチブ「RE100」や、投資家に適切な投資判断を促すため、企業が気候変動に伴う経営上のリスクなどを開示する「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」、パリ協定に整合した目標設定した企業を認定する「SBT」などを通じて、脱炭素経営に取り組んでいる。「国際的によく言及される代表的な指標であり、世界的に通用するため、重視している」(環境省脱炭素ビジネス推進室)として、いずれも環境省が、取り組む企業を支援している。
世界トップクラスの取り組み
環境省のまとめでは、3月上旬時点で、RE100には国内企業50社が参加し、アメリカ(77社)に次いで世界で2番目に多い。TCFDには、イギリスを上回って、世界最多となる342機関が賛同を表明している。また、SBTでは、アメリカ(118社)に次ぐ91社が認定されている。いずれもアジアではトップに位置する。
一方、自治体では、二酸化炭素(CO₂)排出量を50年までに実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティー」の表明が相次いでいる。3月15日時点で全国319自治体、カバーする人口は1億人を突破し、計1億207万人に及ぶという。動画では、東北から九州まで全国の自治体から選ばれている。
三つのイニシアチブ全てに取り組んでいる飲料大手のキリンホールディングス。磯崎功典社長は動画で、「地球温暖化の影響で、体調不良や熱中症になる人が世界で拡大する可能性が高いことが分かってきた」と指摘し、熱中症対策として清涼飲料などの製品を通じて、「課題に応えていくことが、ヘルスサイエンス事業の成長にもつながる」と言及。また、「今後も気候変動が事業に与えるリスクや機会について分析と対応を進め、積極的に情報を開示していく」などと語っている。
担当する環境省地球温暖化対策課は「まだ取り組んでいない企業などが、動画を見て、検討するきっかけにしてほしい。取り組んでいくヒントにもなる」と話している。
今後、英語での発信の準備も進めているという。動画は、専用のサイト(http://www.env.go.jp/earth/carbon-neutral-messages/)などから閲覧できる。