2021.05.17 【エアコン特集】巣ごもり需要で夏商戦活性化

夏場に向けてエアコン売り場を強化する動きが目立つ

 2020年度は、出荷台数が1000万台を超えたルームエアコン。新型コロナ禍による巣ごもりや、特別定額給付金支給などが需要を押し上げたが、今も堅調な需要は続いている。家電量販店も夏に向けて売り場の提案を強化しており、続く巣ごもりによる夏商戦の活性化にも期待がかかる。

 エアコンは、テレワークの浸透でこの一年、未設置の部屋への導入がこれまで以上に進んだ。

 人工知能(AI)やIoT対応などで、「操作いらず」の快適制御を実現する機種が増えるとともに、ハード面でも清潔性を維持する機能の強化、暖房能力の向上などが進展。じわりと普及してきた北海道や東北などの寒冷地でも、20年度はエアコン需要が堅調だった。日本冷凍空調工業会(JRAIA)の統計では、1009万7000台と過去最高を更新している。

 コロナ禍でも販売が好調だったエアコンは、量販店でも力が入っている製品だ。緊急事態宣言で現在も対象地域の一部店舗で臨時休業、時短営業を行っている量販店もあるが、底堅い需要は続いており、販売にもプラスとなっている。ケーズホールディングスの4月の月次速報では、エアコン販売は前年同月比で66%伸びている。

 ビックカメラも例年4月から開始するエアコンの本格展開を、今年は前倒しして3月から実施。工事業者の手配の問題から、夏のピーク時にすぐに設置できないといった課題を解決するために早めの購入を促し、需要を平準化しようとする動きを一段と強めている。

 エアコンは増減を繰り返しながらも、需要の底上げがここ数年で進んできた。冷蔵庫や洗濯機といったほかの大型家電に比べて参入メーカーも多い。ヤマダホールディングスがエアコンのSPA(製造小売り)製品である「RIAIR(リエア)」を5月に発売するなど、売り場の拡大や販促の強化だけでなく、オリジナル製品として量販店が展開するようにもなってきた。年間7兆円程度とされる国内の家電市場の中でも、それだけ市場の潜在性が高いと見られているからだ。

 内閣府の調査による21年3月の1世帯当たりのエアコン保有台数は約2.8台。この数字からすると、世帯当たりの導入余地はまだある上、寒冷地での普及も今後はもっと進んでいくことが見込まれる。

 素早い点火や足元の暖房能力などでは石油ファンヒーター、ガスヒーターなど他の熱源に軍配が上がる面もあるが、IoT化を生かし、年間を通した快適性を提案するエアコンは、使い勝手が良いのも事実。

 IoT化も急速に進んでおり、下位機種から上位機種まで展開するほとんどのエアコンでスマートフォンから遠隔操作できるようにするなど、メーカー側も時代に合わせた対応を急いでいる。

 JRAIAは21年度に935万1000台のエアコン出荷台数を予測する。特需の影響もあったと見て70万台ほど減ることを見込むが、20年度のエアコン出荷も当初は減少すると予想されていた。900万台を超える高水準が続いていたことも背景としてあったが、コロナ禍がエアコン需要を1000万台超にまで押し上げるとは誰も想像がつかなかったことが大きい。

 現在、新型コロナは依然として猛威を振るっている。市場の先行きは不透明であり、従来以上に急変もしがちだ。消費者の動きも予測がつかない面はある。ただ、エアコンにとってはプラスの効果が続く可能性は低くないはずだ。