2021.05.20 【EMC・ノイズ対策技術特集】ノイズ対策の重要性高まる自動運転やIoT機器需要増に対応

車載CAN-FD用コモンモードフィルター(TDK)

産業機器向けの三相用小型・低背ノイズフィルター(双信電機)産業機器向けの三相用小型・低背ノイズフィルター(双信電機)

 エレクトロニクス市場では、ノイズ対策技術の重要性が一段と高まっている。機器のデジタル化や高周波化、高速伝送化が進む中で、誤動作を防止し、安全で安定的な動作を確保するためには、EMC(電磁環境両立性)部品による、発生ノイズの抑制や妨害ノイズ耐性確保が求められる。近年は、第5世代移動通信規格5Gの本格化や、自動車のADAS/自動運転化進展、IoT機器需要増大などに照準を合わせた各種EMC対策部品の技術開発が活発化している。

 ノイズ対策の手法としては、フィルタリングやシールディングが一般的に用いられている。フィルタリングは電子機器の信号ライン、電源回路などにコンデンサー、インダクター、複合部品などのノイズ対策部品を用いる手法。これらの電子部品には、電子機器の高密度実装化の進展に伴い、より小型で高性能な部品が要求されている。一方、シールディングは、電子機器のハウジングなどに絶縁材料を施し、対策を行っている。

 これらにより、発生ノイズを抑制させるEMI(電磁妨害)対策、あるいはノイズを受けても耐えられるようにするEMS(電磁耐性)対策への対応が図られている。

 EMC部品の種類には、周波数分離によりノイズ対策を行うインダクターやチップビーズ、コンデンサー、伝播モードでノイズ成分を分離するコモンモードフィルターやライントランス、電位で分離するツェナーダイオードやバリスターなどがある。5G関連市場の拡大に伴い、ノイズ抑制シートへの注目も高まっている。

車載EMC部品技術

 自動車は、電子化・高機能化の進展でECUの搭載点数が増加し、各ECU間を接続するためのインターフェースにおけるノイズ対策が不可欠となっている。最近は、自動車における車載イーサネット利用が始まりつつある中で、モード変換特性Scd21(ディファレンシャルモード信号がコモンモードノイズに変換される割合)をより改善したCMF(コモンモードフィルター)などが開発されている。

モバイル端末用EMC部品技術

 スマホやタブレット端末などの高性能モバイル端末では、高速データ処理などの高性能化に合わせ、高密度実装化が一段と進み、超小型のEMC部品が多用される。特に、高速差動伝送用CMFや通信妨害対策用の高周波フェライトチップインダクターなどが多用され、フェライトチップビーズは0402サイズなどの超小型品が量産化されている。ESD対策用に、超小型サイズの積層チップバリスターの商品展開も進められている。

ノイズ抑制シート

 ノイズ抑制シートは、磁性体粉末を樹脂中に分散・混合しシート状にした構造で、製品に含まれる磁性材料が自然共鳴し電磁波エネルギーを熱エネルギーに変換することで高周波ノイズを効率的に抑制する。5G対応の高周波帯域向け製品もある。