2021.06.10 【オーディオ総合特集】コロナ禍でも市場活性化巣ごもり定着で音楽・動画ファン拡大

写真1 オンラインで公開されているOTOTEN

 OTOTENが中止されオンラインで開催されるなど、オーディオ市場もコロナ禍の影響を受けて〝ニューノーマル(新しい日常)〟が定着し始めている。ワイヤレスイヤホン、ハイレゾオーディオ対応製品、4K8Kコンテンツ充実によるホームシアターへの関心が高まり、ストリーミングの定着、アナログレコードの完全復調やカセットテープの復権など、話題が多いのもこの市場の特徴。巣ごもり生活の定着で、音楽や動画ファンの層が拡大している。店頭にも客足が戻ってきており、市場活性化が期待されている。

■コロナ禍でも高水準を続けているオーディオ関連製品

 グラフ1は電子情報技術産業協会(JEITA)が毎月発表している民生用電子機器の国内出荷金額の推移。カーAVC機器、オーディオ関連機器、映像機器をまとめたもので、直近の4月の国内出荷額は前年同月比138.6%の1136億円を記録している。

 カーAVC機器は同164.4%の562億円、オーディオ関連機器は同112.6%の59億円、映像機器は同136.6%の515億円だった。

 昨年同時期は現在ほど感染者数は多くなかったが、店舗の休業や営業時間短縮などもあり、徹底的な自粛ムードで販売が振るわなかったことも今年の伸長の背景。購買意欲は昨年6月から回復して、業界関係者の話では高級オーディオの出荷は世界的に好調で「巣ごもり需要が追い風になっている」という。国内も同様で特別定額給付金の効果もあった。

■ヘッドホン/イヤホンは市場をけん引

 グラフ2も昨年からの状況で、対象メーカーや製品もアンプ、スピーカーシステム、ステレオヘッドホンに限っているが、多少の落ち込みはあるものの、高水準を保っており、ヘッドホンとスピーカーは相変わらず好調さを保っている。

 4月のステレオヘッドホン出荷台数は前年同月比109%の51万9000台で、スピーカーシステムは同119.3%の7万1000台だった。

 家庭で音楽や映画を楽しむことが定着。家族がそれぞれ好みのコンテンツを楽しむために、ヘッドホンやイヤホンは必需品になり、オーディオ市場をけん引している。

■ハイレゾ定着

 オーディオ市場堅調の追い風になっている要因はいくつもあるが、日本オーディオ協会(JAS、小川理子会長)が2014年6月12日に発表した新音質規格〝ハイレゾリューションオーディオ(ハイレゾ)〟の認知が広がったことが挙げられる。

写真2 ハイレゾオーディオワイヤレス(右)とハイレゾオーディオのロゴ

 音域(再生周波数幅)がCDの4倍以上、音の大きさの階調(精細さ)は256倍以上のハイレゾ定義をクリアした製品に付与されるハイレゾロゴマークを付けた製品が増え、ユーザーが安心して購買できる環境が整ったことが背景にある。

 コロナ禍の消費者の購買行動に、高付加価値製品を求める傾向が顕著になったと指摘されているが、オーディオにおいても同様の傾向がみられ、ハイレゾロゴの効果は高い。

■ハイレゾワイヤレス製品も

 JASは18年11月28日に、〝ハイレゾオーディオワイヤレスロゴ(ハイレゾワイヤレス)〟の導入を発表した。ワイヤードのヘッドホン/イヤホンに限られていたハイレゾロゴ付与が、ブルートゥースを使うワイヤレス接続製品も対象になった。

 ブルートゥース搭載製品はイヤホンでは圧倒的なシェアがあり、〝ハイレゾワイヤレスロゴ〟も市場活性化のけん引役を果たしている。ライセンス認証条件は、データを圧縮(エンコード)して無線で送り、伸長(デコード)して元のデータに戻す〝コーデック〟の認証と、そのほかの回路も含む〝プロダクト〟の2項目が〝ハイレゾ〟の規格に適合していることの2条件。

 コーデック認証は聴感評価と、テスト音源と評価ツールを使った試験でスペッククリアが求められる。

■完全ワイヤレスイヤホンが定着

 完全ワイヤレス製品に代表されるブルートゥース搭載製品は、ヘッドホン/イヤホンの半数以上を占めており市場をけん引。20年までに、ブルートゥース規格搭載製品は年平均成長率7%で、オーディオ市場を引き続きけん引していくと予測されている。

■アナログレコードも伸長

写真3 レコードプレーヤーの人気も高い

 ハイレゾの普及は、一切デジタル圧縮していないアナログレコードへの関心を高め、ブーム化していることもオーディオ市場の追い風になっている。

 ハイレゾ、アナログレコードの新旧トレンド好調は根強いと考えられている。演奏家は、CDなど光メディア、デジタルネット配信、アナログレコードの三つのメディアで作品をリリースすることがグローバルで定着している。店頭のアナログプレーヤーの充実ぶりは、完全ワイヤレスイヤホンに引けを取らない。

 日本レコード協会がまとめている、アナログレコードの生産実績集計によれば、今年4月までの累計枚数は邦盤が前年同期比224%の29万3000枚、洋盤が同125%の12万7000枚、合計同181%の42万枚と絶好調。レコードプレーヤーやカートリッジの販売好調を裏付けている。

■広がる音楽を楽しむ新様式

 世界中が厳しい情勢下にあるが、ネットを通じたミュージシャンのグローバルな活動は活発化している。コンサートの配信も盛んになった。人類だけが享受できる文化的娯楽の音楽を、いつでもどこでも楽しめる環境を支えているオーディオ市場にも、新たな様式が浸透している。ポストコロナ時代にも期待が持てる。