2021.07.16 【電子部品技術総合特集】技術アンケート 主要電子部品メーカー対象

 電子部品メーカー各社は、今年度も積極的な技術開発活動を展開する。電波新聞社は今月、主要電子部品メーカーを対象に技術に関するアンケートを実施した。回答企業は26社。その結果、2020年度の研究開発費は多くの企業が前期比増額を計画。新製品開発の重点分野では自動車関連をトップに、通信インフラ、産機関連などの分野が重視されている。コロナ禍を踏まえた社内体制の刷新などにも力が注がれている。コロナを契機としたデジタルシフト前倒しへの期待も高まっている。

多くの企業が前年比増額を計画
21年度の研究開発費計画

 「2021年度の電子部品メーカーの研究開発費計画」は、多くの企業が前年度比増額を計画する。

 回答18社中、3分の2の12社が前年度比で「増」と回答し、「減」としたのは1社にとどまった。

 昨年の同時期に実施した同様の質問では、コロナ禍による市場の不透明さを踏まえ、多くの企業が「未定」と回答したが、今年は積極的な姿勢が見られる。

専従の人員比率は「10~20%」
研究開発部門の人員

 「総社員に占める研究開発部門(専従)の人員の比率」は企業により幅がある。回答17社中、最も多かったのは、「10~20%」と「5%未満」がそれぞれ5社で並んだ。

 「研究開発部門の全人員に占める外国人の比率」の質問では、回答17社中、「1割以上」と回答したのは計4社。「40%台」とした企業も1社見られた。

「自動車関連」が最多の21社回答
需要分野別の新製品開発分野

 「21年度における新製品開発の重点分野」(複数回答)を聞いた。回答24社中、最も多かったのは昨年同様に「自動車関連」で21社に達した。次いで「通信インフラ」が16社。以下、「FA・制御関連」「スマホ/携帯電話」「ロボット」「医療機器/ヘルスケア」などが上位となっている。

 電子化/電動化が進む自動車は、多くの部品メーカーが最重点分野に位置付けている。通信インフラは、第5世代移動通信規格5G通信本格化への期待が高い。スマートファクトリー化が進むFA・制御関連への注目も高まっている。

「生産技術開発」を重視の傾向
海外での設計・開発機能

 「海外での設計、開発機能について」の質問(複数回答)では、回答20社中、最も多かったのは「生産技術開発」とした11社。次いで「新製品開発」「機種変更のための設計」が9社となった。

 市場のグローバル化への対応や外資系有力顧客のサポートなどのため、海外での技術体制構築は重要性を増している。

 特に昨今は、コロナ禍で日本の技術者の海外工場への出張などが困難になっていることもあり、「生産技術開発」がより重視される傾向にある。

「次世代自動車」「IoT関連」…
2025年以降に向けたR&D強化分野

 「2025年以降を視野にR&D強化に努める分野」(複数回答)を聞いた。回答25社中、最も多かったのは「次世代自動車」の21社。以下、「IoT関連」「5G通信インフラ関連」「医療機器/ヘルスケア」「ロボット」の順となっている。

「国内企業の買収実績あり」6社
M&A/アライアンス/産学連携

 各社の研究・開発に関するM&Aやアライアンス、産学連携への取り組み状況を聞いた。

 「研究・開発におけるM&Aの取り組み」は、回答23社中、「国内企業の買収実績あり」が6社、「海外企業の買収実績あり」が2社。「実績はないが良い案件があれば検討する」と回答した企業も6社を数えた。

 「研究・開発におけるアライアンスについて」の質問では、回答24社では、「国内外のいずれの企業ともアライアンスがある」と答えた企業が7社に上った。

 「産学協同の研究開発について」の質問では、回答24社中、「行っている」が計19社で約8割を占めた。うち8社は「積極的に行っている」と回答した。

半数が「開発体制の見直し行う」
アフターコロナ・ウィズコロナの開発戦略

 コロナ禍の開発業務への影響や、今後の市場に与える変化などを聞いた。

 「コロナ禍の開発業務への影響の有無」(複数回答)では、回答14社中、4割強の6社が、「顧客とのデザインイン活動に遅れが出ている」「顧客の新モデル開発の中止などがあった」と回答している。

 「アフターコロナ/ウィズコロナを視野に入れた、開発体制や生産体制の見直しについて」は、回答20社中、半数の10社が「見直しを行う」と回答。「見直しの内容」では、「グローバルサプライチェーンの見直し・変更」「生産拠点のグローバルでの分散化強化」などの回答が多かった。

 「コロナ禍が各アプリケーション分野に与える影響」に関する質問では、「5G」「ロボット」「自動運転」「EV化」などさまざまな分野で、多くの企業が「市場拡大ペースを加速させる」と回答している。

約4割「導入済み」、近く予定も
再生可能エネルギー活用

 世界的なESG経営の重要性が増している。各社に、「自社のオペレーションでの再生可能エネルギーの活用の有無」について聞いた。回答23社中、「導入済み」と答えたのは約4割に当たる9社。「近く導入予定」とした企業も見られた。

 「カーボンニュートラル達成時期」に関する質問では、一部の部品企業で「達成時期の目標を設定済み」との回答が得られた(グラフは1面参照)。

アンケート回答企業一覧 ▽アルプスアルパイン▽イリソ電子工業▽NKKスイッチズ▽岡本無線電機▽岡谷電機産業▽オータックス▽京セラ▽KOA▽指月電機製作所▽大陽ステンレススプリング▽太陽誘電▽TE Connectivity▽東京コスモス電機▽トーキン▽ニチコン▽日本ケミコン▽日本航空電子工業▽日本シイエムケイ▽日本電波工業▽ヒロセ電機▽北陸電気工業▽ホシデン▽松尾電機▽村田製作所▽メイコー▽山一電機。(26社・五十音順)