2021.08.05 【コンデンサー特集】コンデンサー需要の増大続く 機器の高性能化で高機能製品の開発が進展

世界初の0603サイズ1.0μF MLCC

車載、通信で採用が進む導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー車載、通信で採用が進む導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー

 セラミック、アルミ電解、タンタル、フィルム、電気二重層の各コンデンサーは、昨年夏以降の市況回復やコロナ禍での日常変化を受けて増大する需要の対応に追われる。その一方で機器・装置の高機能、多機能化や自動車の電子化進展に応え、小型・薄型化、高容量化、高耐熱、高耐電圧、高信頼、長寿命化、低抵抗化、低損失化、耐振動化品の開発、製品化が加速。新製品の市場投入を進める。

0603サイズで1.0μF品

 コンデンサー世界市場の約9割(数量ベース)を占めるセラミックコンデンサーは、その約9割を担うチップ積層セラミックコンデンサー(MLCC)で技術開発が一段と進展。MLCCトップメーカーはセラミックおよび電極材料の微粒化・均一化による薄層成形技術と、高精度積層技術を用い、世界初の0603(0.6×0.3ミリメートル)で最大静電容量1.0μF品、1005(1.0×0.5ミリメートル)で同10μF品を製品化。自動車のパワートレイン/セーフティー向けに量産を始めた。ワンサイズ大きい従来の同容量品に比べ、0603品は実装面積比で約65%、体積比で約80%、1005品は同約50%、同約70%小型化した。2017年に量産開始した0201(0.25×0.125ミリメートル)は、最大静電容量0.1μF品、0402(0.4×0.2ミリメートル)は同1.0μFの量産を始めた。

 おおよそスマートフォンに1000個、ノートパソコン(PC)に800個、タブレットPC600個、自動車3000~8000個、デジタルテレビ600個、スマートウオッチ200個のMLCCが搭載される中、MLCCの小型・高容量化ニーズは強まる一方だ。

 コンデンサー世界市場の数量ベースで約5%、金額ベースでは約3割のアルミ電解コンデンサーも昨年夏以降の自動車、第5世代移動通信規格5G基地局、産業機器、白物家電、再生可能エネルギー向けの需要増に対応。同時に高温度、長寿命、高容量、高リプル、低ESRなどの要望にも積極的に応える。

 大手メーカーの1社は、基板自立形で業界最高温度対応の125度3000時間保証品、業界最小で105度5000時間保証品を開発。10月に量産を始め、5G基地局、サーバー、再生可能エネルギー向けの需要に対応する。高信頼電極箔、電解液保持量の高い電解紙を採用。電解液の蒸散を抑える構造を用いた。チップ形でも低蒸散・低比抵抗電解液を採用し、φ10×10Lミリメートル品で150度2000時間保証、φ8×10Lミリメートル品で150度1500時間保証品を開発。25V、35Vの全4品種をそろえ、自動車エンジン駆動系周辺ECUの超高温対応品として4月から量産を開始した。

ワンランク高容量化を達成

 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーは、高容量陽極箔の採用、電解質材料の最適化で従来品のワンランク高容量化を実現。車載、通信で高まる高リプル電流、低ESR特性の要求に応える。導電性アルミ固体電解コンデンサーも材料の薄手化や、高容量箔を用いて高容量化を進める。導電性高分子などの要素技術を見直し高耐熱・高耐電圧化にも取り組む。

 タンタルコンデンサーは、タンタル粉末の微細化で大容量化に対応。小型化には下面電極構造で厚み約1ミリメートルの薄型化を実現。基板端子構造でワンランクのサイズダウンを図る。

 フィルムコンデンサーはHV、EV、PHVの普及に伴い高信頼性とともに小型・薄型化の対応が進む。また、太陽光発電や風力発電の再生可能エネルギー需要増によるパワーエレクトロニクス市場の拡大で、インバーターシステムの高効率化、省エネ化のため小型化、高耐電圧化が一段と求められている。電気二重層コンデンサーは、メモリーバックアップ用途に加え、エネルギー有効利用対策用として低抵抗化による急速充放電や大電流充放電への対応、小型化、長寿命化が進む。