2021.09.14 【空質関連商品特集】関心高まるウイルス対策、乾燥シーズン前に各社が提案本格化
家電量販店でも除菌機器の提案を強化
新型コロナウイルス禍は、感染が拡大した1年余りの間で、人々の生活スタイルと需要構造を大きく変えることになった。特にウイルス抑制や除菌に対する意識が急激に高まり、空気清浄機や除菌機器、加湿器などの需要が急増。参入企業も増え、さまざまな製品が市場で提案されている。ウイルスがまん延しやすい乾燥シーズンへの突入を控え、各社の提案が本格化している。
「入店の際にはアルコールによる手指消毒のご協力をお願いします」
7月30日、東京・池袋にオープンした「ビックカメラ池袋セレクト」。店舗入り口にはアルコール消毒液と体温を測定する非接触型サーモカメラが設置され、次々と訪れる客を案内するスタッフが協力を依頼していた。
こうした光景は、小売店に限らず、あらゆる業種業態の店に入店する際、当たり前のものとなった。同時に、家庭やオフィス、飲食店、ホテル、病院などで空気感染や接触感染を防ぐものとして、空気清浄機をはじめとするウイルス抑制や、除菌に役立つとされる機器の販売が急増。製品を供給する企業の業績を押し上げる要因になるとともに、こうした需要が続くと見る企業の参入を助長し、市場での競争が激化してきた。
その筆頭は空気清浄機だ。日本電機工業会(JEMA)の統計では、2020年度の出荷台数は前年から8割近く伸び、約359万台を記録し、過去最高となった。昨年度との対比で今年度は需要が落ち着いているように見えるが、4~7月までで2桁伸長と高い出荷水準が続いている。ウイルス抑制に対する社会的な関心が高いことがうかがえる。
これから、コロナ禍での本格的な2度目の冬を迎える。乾燥しやすい冬は、ウイルスがまん延しやすい。その予防策として湿度管理も重要で、加湿器にも注目が集まる。
加湿器も昨年度、大幅に出荷が伸びた製品の一つだ。JEMAの統計では前期比6割増の121万台となり、通常はオフシーズンの4月ごろから例年とは異なる〝引き〟を見せていた。JEMAに加入していないメーカーの製品も市場では多いが、傾向としてはそう変わらず、大幅に伸びている。
国内トップシェアのダイニチ工業は今年度、加湿器市場が1割ほど落ち込むと予測しているが、足元では前年を上回る出荷台数を記録。感染症予防策としての加湿器に対する関心が想定を超えて高いままであることに、シーズンインを目前に勢いづいている。
除菌装置も急速に普及
コロナ禍は、次亜塩素酸やオゾンなどを発生する除菌機器への関心も改めて高めた。これまでもメーカーから提案されていた製品だが、家庭用や業務用として、この1年余りで急速に普及し始めている。メーカーも生産体制の増強やラインアップの強化を進め、需要に応えている。
次亜塩素酸 空間除菌脱臭機「ジアイーノ」を販売するパナソニックは、今月下旬に発売する新製品で脱臭能力を高めるとともに、季節に応じて加湿量を選べる新機能を搭載。除菌・脱臭しながら加湿器としても使える製品として提案していく。家庭用として2017年から展開し、今年1月に累計20万台の販売を突破した実績を強みに、家庭へのさらなる浸透を狙っている。
オゾン除菌では、家庭用としても多くの実績を持つマクセルが業務用の展開を加速している。30畳相当の広い空間の除菌・消臭に役立つ製品の提案を本格化。アイワジャパンも、60畳相当の広さに対応するオゾン除菌と空気清浄を同時に行う機器の販売に力を入れている。
両社が狙うのは、病院やホテルなど除菌・消臭に敏感な施設への導入だ。こうした施設ではウイルス対策として除菌機器の導入などを重視しており、さまざまなメーカーが営業を仕掛けている。同時に複数台の導入も見込めるため、新たな収益源として取り組む企業が増えている。
大空間に対し、会議室やトイレなどのパーソナル空間をターゲットにした製品も登場している。例えば、ホタルクスの「ホタルクス エアー」。光触媒を使った除菌脱臭機で、小型な本体を生かしてさまざまな場所で使えるようにしている。オフィスのデスクに置くといった用途もその一つだ。
除菌機器は、大空間から小空間まで次亜塩素酸やオゾン、紫外線、光触媒など、多様な除菌方法の提案が活発化している。各社は、第三者機関によるエビデンスを取得するなど効果検証も行っており、除菌効果をうたった提案がこれまで以上に盛んだ。ユーザーにとって選択肢が広がっており、用途を考慮に入れた製品選定がますます重要になりそうだ。