2021.11.12 「解体ではなく未来に向けた進化」 綱川社長が強調東芝、新中期計画に3分割盛り込む
「自信を持って進む」と語る綱川社長
東芝は12日、グループを独立した3社に分割して再編する方針を決めたと発表した。このうち、インフラとデバイスを手掛ける二つの事業会社は新規に上場。残る東芝本体は、関連会社の半導体メモリー大手キオクシアホールディングス(HD)の株式保有などを担い、それぞれの道で競争力を高めて企業価値の向上を狙う。日本の大企業がこうした完全分割に踏み切るのは初めて。
今回の分割・再編は、同日に公表した新中期経営計画に盛り込んだ。二つの事業会社は2023年度下期の上場完了を目指す。臨時株主総会を来年1~3月に開き、株主に諮る。
同日に開いたオンライン上の記者会見で、綱川智社長兼CEO(最高経営責任者)は「解体ではなく未来に向けた進化だ。自信を持って進みたい」と力を込めた。
具体的には、発電所や鉄道・産業向けシステムなどの「インフラサービスカンパニー」、パワー半導体や大容量HDD(ハードディスクドライブ)、アナログIC(集積回路)などの「デバイスカンパニー」、キオクシアと東芝テックの株式保有を目的とする「東芝」に分割。分割後の3社が相互に株を持ち合うことはないという。
21年度売上高の規模はインフラサービスが約2兆円、デバイスで約8700億円。綱川社長は「財務体質がいい形で進めるため(分割で規模が縮小する)心配はない。それぞれが俊敏な経営をする方のメリットがかなり大きい」と強調。新体制の下で両社が意思決定を迅速化させ、独自に戦略的なパートナーを選べるようにする。
約4割を保有するキオクシア株については、速やかに現金化した上で全額を株主還元に充てる方針についても明言。これまで、上場に伴う売却益の過半を還元するとしていた。
複合企業の企業価値が事業価値の合計よりも過少評価される「コングロマリット・ディスカウント」の解消を狙っているかと問われると、綱川社長は「結果としてコングロマリット・ディスカウントの解消につながると考えている」と説明。「物言う株主」らから株主還元が求められる中、ステークホルダー(利害関係者)にとっての価値を最大化する「最善の道」を突き進む姿勢も強調した。