2021.11.16 太陽光発電の自己託送、一括支援サービス 新会社の職務執行者、中央電力の北川竜太取締役に聞く

中央電力の北川取締役執行役員

「どんな再エネか」問われる時代

 マンションの一括受電などの電力サービスでトップシェアを競う中央電力(東京都港区)が、自己託送に関する必要な手続きやメンテナンスなどを一括して支援する新サービス「じこたくサポート」に乗りだした。自己託送は、大手電力グループの送配電網を活用して、自社の離れた発電設備から自社へ電力を供給する仕組みだ。ニーズの高まりを見込み、大手リース会社の三菱HCキャピタルと組んで、新会社リネッツ(東京都千代田区)を10月下旬に立ち上げた。リネッツの職務執行者となった中央電力の北川竜太エネルギー事業本部長取締役執行役員に、サービスの内容や戦略を聞いた。

―自己託送とはどのような仕組みですか。

 北川取締役 当社が始めたのは太陽光発電の自己託送だ。設備のコスト削減などが進んで事業採算上、見合うようになり、事業を始める。2012年以降、再生可能エネルギー固定買い取り制度(FIT)で太陽光発電の導入は広がったが、売電価格は下がっている。今回はFITに頼らないサービスで、自分たちで投資した分を電気料金で回収していくモデルを進めようとしている。

 自己託送のスキームは太陽光ありきではなく、電源はどんなものでも構わない。例えば、大規模な工場では自家発電設備として火力を持つ。そういった発電所で出る熱を、工場内で利用するケースがある。熱の需要に合わせると電気が余ったり、電気需要に合わせると熱が余ったりする。

 その辺りのコントロールが重要で、電気が余るともったいない。工場内で電気を全て使えなくても、余った電気を別の工場で使えるようにする。そのために自己託送のスキームが整理された。同じ企業グループであることが今のルールだ。

―新サービスの内容は。

 北川取締役 オンサイト、つまり自分の敷地内に発電所を置いて自家消費する場合は、もともと誰でも電力小売事業者を絡ませずにできる。だが、系統を通して電気を買う場合、必ず小売事業者を絡ませなくてはならない。自己託送という制度はそれをしなくていい。しかし、誰でも認めると小売事業者の役割がなくなってしまう。そのため、自社グループ内の需要を賄うためだけのやりとりで、送配電網事業者に一定の料金を支払って借りることができる。

 当社のサービスは、自己託送の裏側全てをサポートする。離れた自社工場の敷地などに太陽光を設置するが、そういう条件が整った企業ばかりではない。敷地がない企業には、土地を見つけてくるところからサービスする。

 コンセプトは、できるだけ環境負荷の小さい発電事業を展開していくことだ。テニスコートやバスケットコートより一回り大きいくらいの耕作放棄地などに低圧の太陽光発電所を複数、建設し、電力量を確保していく。土地代などを電気料金などで回収する方法もでき、初期投資もほぼなくて済む。

―自己託送のニーズは高まりますか。

 北川取締役 二つのタイミングが重なってきた時期だ。まず、国内外でカーボンニュートラルを目指す動きが本格化してきた。国内の30年の温室効果ガス46%削減など、短期的な目標に向けて企業がやれることは限られる。洋上風力の本格化はまだ少し先だ。低圧の太陽光であれば、手続きさえ終われば、せいぜい工事自体は2~3週間で済む。

 もう一つは、今まではFITに頼らなければ再エネの導入が進まなかった。だが、太陽光はコストが下がり、非FITでも経済的に見合ってきた。条件が足りていなくても、大手企業などではこれまでより多少、電力料金が高くなっても、取り組みたいというニーズが出てきているのが現状だ。

 自己託送は非FITのモデルであり、電気料金に上乗せされている再エネ賦課金といった国民負担がなく広げていけるモデルだ。年々、ニーズは高まっていく。

―どういう企業が選択しますか。

 北川取締役 現状で、再エネ電気を最も調達できる方法は、非化石証書などの証書を組み合わせて導入する形だ。だが、この仕組みでは足りない状況が生まれつつある。

 非化石証書は、これまでに作ってきたFITの再エネ発電所から生まれた価値を証書化する。過去のコストの一部を国民が負担している価値を買っているだけ。つまり、再エネ発電所が増えること自体には貢献していない。

 それでは不十分だとする企業が徐々に出てきた。これまでにできた発電所からの価値を買うだけでは先進性がなく、貢献度合いが小さいという考え方だ。特に外資系企業などでは顕著で、再エネ電力を使っているかだけでなく、いつごろ建設された発電所の電力かや、できるだけ環境負荷が小さい発電所の電力を使っているかなどを問うケースも生まれている。

 「どんな再エネか」が問われる時代が来ている。一部上場の大手企業などは先進的なステークホルダーが多く、自己託送などの選択を増やしていくだろう。

 カーボンニュートラルに向けたサービスラインアップの目玉にする。大手企業向けに電力販売を展開していくきっかけにしたい。