2022.01.11 【電子部品総合特集】ハイテクフォーカス ローム小型・薄型機器の無線給電化を容易に実現できる、ワイヤレスチャージャーモジュール「BP3621(送電)」 「BP3622(受電)」

ワイヤレスチャージャーモジュール「BP3621」(左)と「BP3622」

■市場動向

 近年、スマートフォン、スマートウオッチなど幅広いアプリケーションで、接点端子を無くし、防水・防じん性を高めることができる無線給電機能の導入が加速している。この利便性の高い無線給電機能は、小型・薄型機器などにおいても同様に搭載を求められつつある。一方で、アンテナ形状・サイズ・距離によって給電の可否や効率が変わるため、その搭載には電子機器の試作・調整・評価などを繰り返す必要があり、アンテナ設計・レイアウト設計において、非常に多くの開発負荷を必要とする。そのため、汎用(はんよう)的に小型機器で利用できる無線給電規格・方式への期待が高まっている。

■無線給電方式と特徴

無線給電方式比較

 無線給電方式には、送電側と受電側の共振器を磁界共鳴させて電力を伝送する磁界共鳴方式と、送電側と受電側との間で発生する誘導磁束を利用して電力を送電する電磁誘導方式などさまざまな方式が存在する。磁界共鳴方式を採用した13.56メガヘルツワイヤレスチャージャーは周波数が高いためアンテナを小型化できる特長を持っている。

 ロームは、小型・薄型機器の無線給電化を容易に実現するアンテナ基板一体型の13.56メガヘルツに対応した小型ワイヤレスチャージャーモジュールを開発した。

■13.56メガヘルツ高周波数帯を用いたワイヤレスチャージャーモジュール「BP3621」「BP3622」の概要

 今回紹介する「BP3621(送電モジュール)」「BP3622(受電モジュール)」は、業界初(2021年12月ローム調べ)の13.56メガヘルツ周波数帯を用いた小型汎用ワイヤレスチャージャーモジュールで、最大200mWの給電量に対応し、およそ20~30ミリメートル角サイズに最適なアンテナ・レイアウト設計を搭載している。給電効率の最適化に必要な試作・調整・評価などの開発工数を大幅に削減できるため、小型・薄型機器の無線給電化を簡単に実現可能。また、内蔵アンテナで双方向のデータ通信やNFC Forum Type3 Tagに対応できるため、アプリケーションの通信機能拡張にも貢献する。

 次にBP3621、BP3622(以下、本製品)の具体的な機能とその効果について紹介する。

■開発工数を大幅削減し、容易に無線給電機能を実現

開発フロー比較イメージ

 本製品は、パターンアンテナ、設計パラメーターの影響を独自のマッチング調整でシミュレーションしたアンテナ設計技術と厳密なマッチング調整、配線ロスを低減した基板レイアウト技術を搭載している。これら技術を盛り込んだアンテナ基板一体型のモジュールであり、アンテナと制御回路を別で構成する場合と比べて、給電特性を保証しているため、アンテナ設計・レイアウト設計や給電評価を行うことなく製品評価が可能。開発工数や基板修正における設計負荷を大幅に削減し、容易に無線給電機能を実現する。

無線データ通信イメージ

■筐体設計の自由度向上

 本製品は、13.56メガヘルツ高周波数帯の磁界共鳴方式採用によりアンテナを小型化しており、既存の無線給電規格で難しかったアンテナ・マッチング回路・ワイヤレスチャージャーICを小型基板に搭載している。サイズは、送電モジュールBP3621が35.0×26.0×1.5ミリメートル、受電モジュールBP3622が24.0×17.0×1.5ミリメートル。搭載部品を全て表面に実装した裏面フルフラットの基板構造により、筐体(きょうたい)への貼り付けを容易にすることで、筐体構造のシンプル化や設計の自由度向上に貢献する。

■モジュール内蔵のアンテナでデータ通信機能を拡張

 本製品は、NFC通信規格と同じ13.56メガヘルツの高周波数帯を使用しているため、モジュール内蔵のアンテナで給電と通信の双方に対応できる。双方向のデータ通信(通信速度212kbpsで最大256バイト)やNFC Forum Type3 Tagのタグ通信が可能となり、ファームウエアのダウンロード、センサデータ・デバイス情報・認証情報のセキュアなデータ転送や書き換え、バッテリー出力電圧値の転送といったアプリケーションのデータ通信機能拡張に貢献する。

■設計をサポートするアプリケーションノート

 ロームではお客さまのワイヤレスチャージャー機能の簡単実現と、開発期間短縮にさらに貢献するため、ロームの公式ウェブサイト上にてアプリケーションノートを公開している。これには、主要機能である給電機能と通信機能の設定条件から使用接続方法などを記載している。今後は評価ボードなどの拡充を計画しており、さらにワイヤレスチャージャーモジュールの普及を促進できるようにサポート体制を強化している。

 〈筆者=ローム〉