2022.01.14 【電子材料特集】電子材料メーカー各社 国内外で設備投資戦略を活発化

電子材料メーカー各社の設備投資が活発化している(21年12月に竣工した中興化成工業宇都宮工場新棟)

次世代自動車、5G、半導体関連 旺盛な需要増に対応

 電子材料メーカー各社では、グローバルでの旺盛な材料需要に対応するため、生産能力増強に向けた設備投資を活発化させている。次世代自動車、5G関連、次世代半導体プロセス関連などでの需要増を踏まえ、今年も国内外での積極投資を計画する。

 電子材料の世界需要は、新型コロナ禍からの経済回復を追い風に、2021年は好調に需要が増大。直近でも高水準が継続している。特に最近では、世界的な自動車生産の回復に加え、xEV化やCASEの進展が自動車1台当たりの電子材料ポテンシャルを押し上げているほか、5G関連需要(端末、基地局)の本格化、半導体プロセス技術の進化、脱炭素化ニーズの高まりも、高性能な電子材料の需要を増大させている。

生産性を改善

 電子材料メーカー各社は、いずれも中期計画や長期ビジョンにおいて、積極的な売上高・利益の拡大を計画しており、今後も中長期戦略に基づき、重点ターゲット領域に向けた生産能力増強投資を推進していく。

 22年も、多くの企業が国内外で新工場や新工場棟増設を予定しているほか、既存工場での生産ライン増設や、生産性改善活動を通じた能力アップなどを計画している。直近の旺盛な需要を踏まえ、当初の設備投資計画を前倒しする企業も一部で見られる。

 デクセリアルズは、差異化技術製品の「反射防止フィルム」と「表面実装型ヒューズ」の供給能力向上のため、本社・栃木事業所(栃木県下野市)で設備増強を進める。反射防止フィルムは車載ディスプレー向けの新規採用が順調に拡大していることから、約1年前倒しで投資を実施し、23年度の稼働を予定する。量産開始後の生産能力は現状の約1.5倍に増強される。

 また、表面実装型ヒューズは、リチウムイオン電池搭載アプリケーションの拡大に対応するため追加投資を実施中で、22年度下期の量産開始後には現状の約2倍に生産能力が増強される。

 信越化学工業は、フォトレジスト需要の増大に対応するため、直江津工場(新潟県上越市)に新建屋を建設し、能力増強を図る。2月の工事完了を目指している。

 クラレは、耐熱性ポリアミド樹脂「ジェネスタ」の生産能力増強のため、タイ新プラントの建設を進めている。今年半ばから後半に年産能力1万3000トンの新プラントを完工させ、量産試作を開始する。

 タイプラントの商業運転開始後には、国内と合わせたジェネスタの生産能力が2万6000トンに増強される見通しだ。

 中興化成工業は、半導体、医療関連や自動車関連向けフッ素樹脂製品の製造増産に備えるため、宇都宮工場(栃木県鹿沼市)の新棟「WEST WING」を21年12月に竣工した。3月からの稼働を予定する。

 同時に、電子材料メーカー各社では、研究開発センターの新設・増設に向けた投資も活発化している。

 社会や技術の変化のスピードが一段と速まり、素材開発にもスピードが求められている。各社は、開発体制を拡充し、次世代通信や次世代モビリティー、次世代半導体プロセスといった成長分野をターゲットに、基盤技術の開発や新商品開発・プロセス開発などのスピードを加速させることで、競争力の強化を目指す。

 最近は、研究開発施設内に顧客やアカデミア、スタートアップなど社外パートナーとの協創空間を設けることにより、他社とのコラボレーションを通じた新領域の開拓、新たな価値創造などが行われている。