2022.01.14 【電子材料特集】AI活用の拡大が進む

品質向上やコスト削減など志向

 電子材料業界では大手メーカーを中心に、製造業務や開発業務に人工知能(AI)を活用する動きが進む。これにより、製品品質の向上や製造コストの低減、製品開発のスピードアップなどが志向されている。

 化学プラントでの製品の品質異常検知は通常、特性プロセスのデータに対するしきい値を用いた異常の自動検知や、高度なスキルを持つ社員の目視による評価などで実施する。

 これに対し最近は、IoTやビッグデータ、AIなどを用いることで、プラント設備の信頼性向上を目指した革新的な生産技術開発が進展。ITソリューション企業との連携による次世代製造ラインの実証などが行われている。

 一例として、化学プラントの製造過程での製品品質予測がある。原料や炉の状態(流量、圧力、温度)などのプロセスデータとガス製品の品質の関係を、ディープラーニング(深層学習)を用いてモデル化し、プロセスデータ収集時から数十分先のガス製品を高精度で予測できる技術などが開発された。

 同時にAI活用による製造設備の故障予防や品質異常時の原因究明・分析なども進められ、これらの情報のフィードバックを通じたプラントの運転効率向上が追求されている。

 開発業務では、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)の手法を用いた材料開発に取り組む企業が増えている。MIとは、AIの深層学習を活用することで開発効率を高める手法だ。

 新規材料を開発する際に必要となる分子構造や配合、混合条件の絞り込み作業を、エンジニアではなくAIが行うことで、開発期間の大幅短縮が期待される。このため、AI人材の採用や育成に向けた取り組みが活発になっている。

 さらに一部の企業では、電子材料の営業・マーケティング業務へのAI活用もスタートした。素材の物性と採用用途の関係をAIに学習させ、それを基に、AIに新規用途を探索させることで、人間では思いつかないような新規用途の掘り起こしにつなげることを狙う。

 電子材料メーカー各社は中長期の技術ロードマップを策定するとともに、自社業務へのAIの活用拡大に努め、差別化の促進と事業のスピードアップを目指す。