2022.01.21 【LED照明特集】サプライチェーン改革など加速

部品調達の問題が照明にも影を落としている

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、導入工事の先送りや中止などが相次ぎ、一時的に停滞した国内の照明市場。コロナと共生する新しい生活スタイルが定着したことで、市場も回復傾向に入った。半面、昨年後半から本格化し始めた半導体や電子部品の調達難、物流網の混乱、素材価格の高騰など世界規模での不透明感が照明業界にも影を落としている。今年も状況は見通しにくく、照明各社もサプライチェーン改革や早めの在庫確保、設計変更による部品の代替などリスクヘッジを加速している。

各社、安定供給に全力
IoT対応がコロナ禍で進む

 「製品の供給を止めないようにさまざまな取り組みを進めているが、需要はあるのに供給しきれていない」。そう悔しさをにじませるのは、三菱電機照明の吉村恒則社長だ。

 こうした状況は、三菱に限った話ではない。半導体や電子部品を使うあらゆる機器の製造企業で起こっている世界規模の問題で、照明各社も例外なく影響を受けている。

 2011年3月に発生した東日本大震災を機に、さまざまな業種・業態でサプライチェーンを見直す動きが加速し、災害時でも事業を継続できるBCP(事業継続計画)が整備されてきた。だが、今回はそれを超える〝不測の事態〟が発生している。

 同時に、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」が国内外で猛威を振るい始めた。コロナの感染拡大当初に比べれば、オミクロン株の広がりがLED化へのリニューアル工事そのものを中止に追い込む、といった事態は想定しにくい。しかし、工事期間の長期化や停滞には一時的につながる可能性がある。

 照明を安定供給しにくい状況は、その販売や工事を商売にする電気工事店といった事業者に大きなダメージを与える可能性も指摘されている。

 照明関連の電気工事を主な生業としている場合、製品が入ってこないため、工事の再開時期が未定になり、売り上げを立てられなくなるからだ。

 東芝ライテックの平岡敏行社長は「電気工事店にとっては深刻な問題。安定供給できるようメーカーとして全力を尽くさなければ」と危機感をにじませる。

 国内の照明市場は20年度、コロナの影響で苦戦を余儀なくされた。日本照明工業会(JLMA)の統計によると、LED照明の20年度出荷台数は、住宅用で前年比5.3%減、屋内非住宅用で同7.9%減、屋外非住宅用で同6.4%減と年間を通して出荷が伸び悩んだ。

21年度上期は堅調

 21年度に入ると、そうした状況が徐々に反転。ウィズコロナの生活が定着し、コロナ下でも工事案件などが動き始めた。LED照明の出荷台数は、上期(21年4~9月)で住宅、非住宅を合わせて前年同期比6.3%増と堅調な伸びを見せ、屋内非住宅用に関しては2桁を超える増加を示した。それが下期に入ると、部品調達の問題などが深刻化しだしたことで、減速感が出ている。

 ただ、照明は人々の生活を照らす必需品。屋内外のあらゆる場所で使われるものだ。変化した生活スタイルで求められるようになってきたのは快適性。同時に、IoT技術を活用し、サービスも含めた提案も重要になってきた。

 社会全体でIoT化が進む中、こうした流れは照明業界でも模索が続いていた。各社が独自の技術や製品、システムで提案してきたが、それがコロナ禍を経験し、表舞台に一気に押し出された格好だ。JLMAは、IoT対応した照明をはじめとする付加価値の高い照明を「CSL&HCL」と定義付け、昨年4月から出荷台数に占める割合の公表を始めた。CSLは「コネクテッド・スマート・ライティング」、HCLは「ヒューマン・セントリック・ライティング」の略だ。ネットワーク化による照明制御や機器連携のほか、調光調色や人に寄り添う快適な明かり環境の実現につながる照明をCSLとHCLとしている。

 21年度(4~11月)の「CSL&HCL」の構成は、18.3%。そのうち、最も多いのが住宅用で21.2%になる。逆に屋外非住宅用では2.0%にとどまる。照明のIoT化は、スマートフォンやスマートスピーカーと連携した一括制御などの提案が住宅用で盛んになっている。

屋外非住宅も必須

 一方、特に屋外非住宅では、IoT化を生かした提案は黎明(れいめい)期にある。スマートシティーの実証実験などが全国各地で進んでいるが、こうした中で照明のIoT化は必須と言える。屋外でも照明は高所に設置されることが多いため、各種センサーと組み合わせることで、温度や湿度、人の混雑状況など、さまざまな情報をリアルタイムに収集できる。新たなサービスの創出や、利便性や安全性の向上などに活用できる可能性を秘めている。

 取り組みはスタートしているが、本格的に市場から求められるようになってくるのはこれからだ。コロナとの付き合いが長期化するにつれ、IoT技術は存在感をさらに高めるはずで、各社は先手を打った対応を進めていかなければならない。