2022.01.21 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<71>北欧に学ぶローカル5G導入障壁の突破方法⑦

 前回までフィンランド発祥のサウナをきっかけに第5世代移動通信規格5G導入の可能性を探ってきたが、5Gに関しては北欧が先行している印象だ。もちろんフィンランドは「5G先進国」の一国であるといってもよいだろう。

 2020年の5G基地局の世界売上高シェアでは、中国のファーウェイが29%でトップだが、スウェーデンのエリクソン(26%)に次いで、フィンランドのノキアは3位(22%)だ(在フィンランド日本国大使館資料より)。

 フィンランドの産業を見ると、輸出の8割以上を占める製造業は昔から世界有数の技術を有し、中でも08年ごろまでは携帯電話の電子製品が、それ以降は5Gの通信機器をはじめとしたさまざまな製品開発が盛んに行われている。

 一方で、国内における5Gの普及率はどうなのか?

日本は1%未満

 5Gサービスを始めている主要国(日本、中国、オーストラリア、イギリス、ドイツ、フィンランド、スウェーデン、イタリア)を比較したデロイトの調査リポート「デジタル・コンシュ-マー・トレンド 2020」によると、フィンランドにおいて「既に5Gを利用している」と答えた消費者の割合は7%で、中国の10%に次いで2位となっている。3位はスウェーデンとオーストラリアの6%で、日本は1%未満だった。

 「地域で利用可能になり次第、5Gネットワークに乗り換える」と答えた消費者の割合もフィンランドをはじめとした比較対象国が10%以上だったのに対し、日本はわずか4%だった。これらのデータを見ても他国に比べ、日本における5Gに対する意欲は決して高いとは言えない。

 その理由として日本には周りの様子を見ながら行動を始める〝日和見主義的な文化〟が根強く残っていることが挙げられる。ローカル5G導入に対する意欲もまたしかり。

 例えば、将来、製造業においてワイヤレス(無線)とデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)が当たり前となり、ローカル5Gが業界標準のネットワークになるかもしれないという認識を持っていても「業界標準になった時点でローカル5G導入の検討を始めても遅くない」と、考えている経営者の本音が聞こえるのは筆者だけではないだろう。

 さまざまな仕組みを活用していくに当たり、業界標準か否かは重要な判断要素で、非標準のネットワークの導入は製品入手のしやすさの観点から見ると孤立してしまう恐れがあるからだ。

 この点はノキアとノキアベル研究所の「5Gビジネス・レディネス」リポートでも5Gは全てがつながる安定した通信環境の実現で孤立する可能性があると指摘している。

外部へ広がらない

 IoTや人工知能(AI)によるデジタル化を進めている一部の組織によってローカル5Gの開発と導入が進められているものの、ローカル5Gはいまだ業界標準のネットワークにはなっていない。そのためローカル5Gの基地局やコアネットワーク、ローカル5G対応ルーターや端末などは、組織内に限られて外部へ広がらないということになる。

業界のDXビジネス変革推進

 つまり日和見している企業経営者にとって、現在導入を遮る最も際立った障壁は、ローカル5G対応製品の入手ということになるだろう。そこで、この障壁の突破方法としてノキアが考えているのが、日本における「ローカル5Gエコシステム」の強化だ。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉