2022.02.08 【冷蔵庫特集】IoT化で役割広がる501リットル以上の大容量タイプが人気
IoT化が進む冷蔵庫。501リットル以上の大容量タイプが人気だ
コロナ禍でまとめ買いニーズ増
冷蔵庫で、コロナ禍で変化したライフスタイルに応える機能の実装が進んでいる。市場では庫内容量501リットル以上の大容量タイプが人気で、IoT技術を生かした新機能の提案も活発化してきている。食材の鮮度保持と大容量の両立に加え、IoTを使ったサービスなど、IoT化で冷蔵庫の役割が広がり始めている。
「毎日の多様化する暮らしに対応する冷蔵庫を提案する」。
先月20日に東京都内で開催された三菱電機の冷蔵庫の新製品発表会。新型冷蔵庫の説明に立った大矢恵司冷蔵庫製造部長はこう力を込めた。
この日、三菱は1年前のモデルと同じ幅・奥行きで、容量を30リットル以上増やしたMZシリーズを披露。約8年ぶりのフルモデルチェンジで、これまで以上にまとめ買いしやすくなった新型を紹介した。
コロナ禍で在宅時間が増え、それに伴い調理頻度も増えている。大矢冷蔵庫製造部長は「今後も増えるというのが全体の85%を占めるデータもある」と指摘。「まとめ買いニーズが増えている。宅配の活用や業務スーパーでのまとめ買いなど生活スタイルが多様化している」と強調した。
こうした変化は、冷蔵庫を製品化する家電各社も実感している。それを解決する手立ての一つが大容量化だが、容量を拡大するだけでは高さと幅、奥行きが増すばかりだ。
海外の住宅と違い、日本の住環境では冷蔵庫の置けるスペースは限られてくる。現に市場では700リットルといった、国内の家庭用として最大クラスの容量帯も売られている。半面、それが主力になっていないのは、大部分の家庭が幅685ミリメートル程度で収めなければ、仮に設置できたとしても、窮屈な使い心地になってしまうからだ。
冷凍ニーズも
こうした事情から幅や奥行きは変えずに大容量化という難題に各社が取り組んでいる。断熱材の進化もあって同等サイズで大容量化は進んでいるが、それも物理的な限界は近い。同時に確保した容量をどういった保存ニーズに割り振るかも各社の開発戦略の別れどころでもある。特にコロナ禍となって以降は、食品が長持ちする冷凍ニーズが高まっており、それを重視する姿勢も強まっている。
パナソニックが今月4日に発売した新型冷蔵庫のWPXタイプでは、業務用レベルの急速冷凍機能を搭載し、食材のうまみや食感を保ったおいしい冷凍を提案している。同社によると、家庭における冷凍保存では「食感や味が落ちる」といったおいしさへの不満があるという。
こうした不満点の解消を目指し、パナソニックは、同志社女子大学との産学連携で業務用レベルの急速冷凍「はやうま冷凍」を実現。新型では、より簡単にこの機能を使えるよう冷蔵室の下側に「クイック操作ボタン」を新搭載している。頻繁に使うことを見越した、こうした〝ちょっとした進化〟が冷蔵庫では進んでいる。
冷蔵庫の買い替えサイクルは13年程度。世帯普及率が高い製品であるため、ここ数年は毎年同じような需要動向が続いている。日本電機工業会(JEMA)の統計によると、昨年(2021年1~12月)の冷蔵庫の国内出荷台数は前年比2.2%減の377万8000台となった。2年連続のマイナスだったが、まとめ買いや内食の増加によって501リットル以上の大容量タイプが市場をけん引する形となっている。出荷金額ではほぼ横ばいといった状況で、全体的に高単価製品が売れる傾向が読み取れる。
大幅な出荷増は見込みにくいことから、単価アップが図りやすい大容量タイプを各社は戦略的に重視している。設置幅は同じで大容量といった三菱のような提案もそうだが、IoT化も付加価値を高める施策の一つ。各社最上位機を中心に対応機種を広げている。
パナソニックのWPXタイプは、スマートフォンアプリケーション「Cool Pantry」からクイック操作ボタンの設定時間をカスタマイズできるようにしている。こうした購入後の柔軟な設定変更はIoT化のウリの一つだが、同時にWPXタイプでは、使用状況に応じて自動製氷機能の浄水フィルターをメンテナンスのタイミングで届けるサービスも開始。IoTで利用状況を見守るからこそ実現できるサービスで、冷蔵庫でIoTを生かしたサービス連携が進み始めた格好だ。
三菱もIoT連携により、製氷タンクの水が無くなった際にスマホに給水通知するなど利便性を高めている。調理頻度が増えたことで頭を悩ませがちな日々の献立をサポートするために、料理レシピ動画を配信しているサイト/アプリ「DELISH KITCHEN」とコラボ。差別化機能である「切れちゃう瞬冷凍」を活用したオリジナルレシピをアプリから見られるようにするなど、ソフト提案にもつなげている。
利便性高める
冷蔵庫のIoT化はまだまだニーズを手探りする状況が続いている。ただ、徐々にサービス連携や利便性を高める機能にもつながり始めている。冷蔵庫で提供されるIoT機能が当たり前のように利用される日も、そう遠くないかもしれない。