2022.04.12 新電力の倒産相次ぐ21年度、前年度比7倍に 帝国データバンク調査

調達価格の高騰影響、事業撤退も

 帝国データバンクは、世界的なエネルギー価格の高騰などで電力調達コストが膨らんだ影響が出て、電力小売事業を営む新電力の倒産が2021年度は14社に上ったと発表した。1年間を通じて倒産が2桁に達したのは初めてという。過去で最も多かった20年度の2社から大幅に増えた。

 近年では18、19の各年度に1社が倒産。20年度には初めて2社に増えたが、21年度はさらに7倍へと急増した。21年度に倒産した新電力の多くは自社で発電所を所有しておらず、顧客に供給する電力の調達の大半を電力卸売市場などに依存していたという。

 21年12月の卸電力価格は月間平均で1kW当たり17円となり、前年度同月に比べて2割増の状態だ。一方で帝国データバンクの推計によると、新電力の同月時点の電力販売価格の平均は、供給1MW当たり約1万9000円。前年同月から19%上昇しているものの、電力調達価格の上昇幅約24%を下回った。そうした結果、「利益が急激かつ大幅に圧迫されている」(帝国データバンク)。

 特に、家庭向けの低圧電力よりも安価に設定されている事業所向けの特高や高圧電力分野での影響が大きく、調達価格が販売価格を上回る「逆ザヤ」状態が生じている新電力も多いとされる。自治体向けなどに電力供給をしていた新電力の倒産も相次いでいる。

 その一つが、3月に破産手続き開始の決定を受けたホープエナジー(福岡市中央区)だ。自治体向けが主力だったが、負債規模は新電力としては過去2番目に多い300億円に達した。

 帝国データバンク情報取材課の瓦田真人氏は「入札で電力供給を決める分、想定をはるかに上回る仕入れ価格になってしまったことの影響が顕著だ」と説明する。

 21年冬にも一時、電力市場は1kW当たり200円を超える高値圏で推移した時期があった。ただ、今回は「値上がりが長期間にわたり、かつ短期的には値下がりの材料が乏しい」と瓦田氏。

 20年末から21年初めにかけて起きた市場価格高騰の影響が残ったまま、その後の21年秋以降のエネルギー価格の高騰が追い打ちをかけた格好だ。瓦田氏は「経営余力を削がれた新電力各社の経営を直撃している」と分析している。

 また、倒産に至らないまでも、電力小売事業から撤退したり、新規の申し込みを凍結したりする動きも相次いでいるという。帝国データバンクの調査では、21年4月時点で経産省に登録していた全国の新電力約700社のうち、31社が21年度中に倒産や事業撤退などに至ったことが分かった。全体の約4%に当たる。

 今後も、ロシアのウクライナ侵攻による影響で、原油や液化天然ガス(LNG)の高騰など世界的なエネルギー需給の逼迫(ひっぱく)が予想される。新電力はこれまで、安値で差別化を図って顧客を獲得してきただけに十分な価格転嫁ができない恐れもあり、これ以上の「市場価格上昇に耐えきれない事業者の倒産が今後も発生する可能性が高い」(瓦田氏)。

 瓦田氏は「電力小売事業からの撤退は、供給している顧客らに大きな混乱をもたらす。国は放置すべきではなく、今後、新電力の財務内容などの経営状況を厳しくチェックするきっかけになる可能性がある」と指摘している。