2022.05.10 新電力のループ、30年度までに再エネ開発300MWエネルギー価格高騰余波で自主電源の拡大に注力

会見で説明する中村社長

 再生可能エネルギー系新電力大手のLooop(ループ、東京都台東区)は、出力300MW規模の再エネ電源を2030年度までに開発する方針を明らかにした。関連投資額は約500億円になる見通し。エネルギー価格の高騰などが業界に影を落とす中、契約顧客の8割を占める料金プランなどで値上げして資金を捻出する。自社の再エネ電源比率100%を目指して開発を加速させる。

 4月下旬に開いた会見で中村創一郎社長は、値上げについて「収益性をしっかり確保できる状態にし、収益を再エネに投資するためだ」と説明した。

 開発する再エネは太陽光200MW、風力100MWを計画。野立ての太陽光などを開発し、風力では陸上風力を中心に、風況が良く、系統に接続しやすい地域で計画を進める。「需要地にできる限り近い」(同社)用地などを確保していくという。

 同社の再エネ電源比率は、21年度の計画値で20%、20年度で26%にとどまる。主に再エネ固定買い取り制度(FIT)の再エネ電源を活用して電力供給しているのが現状だ。

初の値上げ

 業界をエネルギー価格高騰の影響が直撃している。多くの新電力が電力を調達している国内の卸売市場では昨年1月の高騰に続き、昨年9月以降も再び価格が高止まる事態になっている。「買って電力を小売りしても、現在の電力会社が出している価格よりも高くなってしまう。まさに逆ざやの状態が続いている」と中村社長。

 背景には、燃料となるLNG(液化天然ガス)価格の影響がある。ロシアのウクライナへの軍事侵攻をきっかけに3月上旬から高騰。電力会社の発電コストを急騰させ、新電力に限らず大手電力も含め、料金値上げなどの対応を取らざるを得なくなっている。

 ループでも4月から電力小売りの新規受付を停止。6月からは一般家庭向け料金プラン「おうちプラン」などの単価の値上げを始める。値上げ幅は全国で1kWh当たり1.5円(5.6%)~4.2円(19.7%)だ。同プランの契約は約30万件に上り、同社の契約顧客(約37万件)の約8割を占める。11年の創業以来、初めての値上げになるという。

 中村社長は「ウクライナ問題が解決すれば日本の電力事情が落ち着く、ということではなく、もっと根本的な問題が残る」と指摘。約85%を火力発電に頼っている日本の電源構成や、他の主要国に比べて低い一次エネルギー自給率(12.1%)に言及し、「化石燃料への依存を解消しない限り、日本は外的要因でエネルギー危機に直面し続ける」と説明した。

 同社は、料金値上げで捻出する資金を自社所有の再エネ電源開発に充て、普及を加速させていく。

 中村社長は「再エネは脱炭素、地球温暖化防止という文脈だけで語られてきたが、エネルギーの安全保障という論点が出てきている」と問題を提起した。