2019.12.27 環境省、気候変動×防災を提唱 ZEBを推進し手厚く助成へ

ブラックアウト時でも電気が使えた「アリガプランニング」の社屋(同社提供)

 環境省は、国内で相次いだ大規模停電などを教訓にして、気候変動と防災との対策を掛け合わせた施策を推進する。太陽光など再生可能エネルギー発電と、蓄電池を組み合わせたZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)推進のため、導入施設に手厚く助成する制度を新設する。停電時に自立できる施設としても機能させるためで、20年3月ごろから公募を始める。

 ZEBは、高効率設備で省エネを徹底化する一方、再エネ導入で創エネし、屋内の年間エネルギー収支をゼロにすることを目指した建物。同省では16年度からZEBなどを補助してきたが、今回は蓄電池との組み合わせを初めて条件として必須化。

 通常のZEB助成では、エネルギー削減率などに応じて補助割合が増減(3分の1~3分の2)するが、今回は一律で3分の2を支援する。新制度は、市役所や集会所、学校など公共性の高い施設が対象。建物の新設や改修時に導入した断熱材や高効率の照明器具、空調機などの費用の一部を国が負担する。

 国内では、19年夏に千葉県で台風被害による大規模な停電が起きた。変動電源である再エネに蓄電池などを組み合わせれば、建物自体が停電時にも自立化でき、防災拠点などとして役立つ。

 18年9月の北海道胆振東部地震に伴って起きたブラックアウト(全域停電)では、ZEBでエネルギー収支ゼロを達成した札幌市内の建設会社「アリガプランニング」の社屋が、発生直後から太陽光発電や蓄電池を活用し、地域で先駆けて業務に必要な電気を使用できたという。

 こうした事例に着目し、同省では、気候変動への対応が防災面にも資するという考えを強調し始めた。同省地球温暖化対策事業室は「温暖化対策は、CO2排出量を減らすだけでなく、気候変動で起こる影響を小さくしていくという両輪がある。ZEBは災害時にも活躍でき、両面で貢献できる」と話す。

 初の予算編成を迎えている小泉進次郎・環境相も「気候変動×防災」の視点で、排出削減と被害軽減の両面作戦を展開する方針を提唱。その第一弾として、19年度補正予算案に新規事業として関連費10億円を計上した。さらに、20年度当初予算案でも、この制度を柱とした事業に98億5千万円を盛り込んだ。

 国は、第5次エネルギー基本計画などで、30年には新築建築物の平均でZEBを達成する目標を掲げている。 同室は「普及するほど、蓄電池などを含んだZEBの建設費が低価格化できる」と狙いを語る。