2020.01.01 【2020年の業界展望】日本電機工業会 長榮周作会長

長榮周作 会長

五輪で景気回復の継続に期待

 昨年を振り返ると、世界では米中貿易摩擦、英国のEU離脱交渉の難航など不透明な海外情勢が続き、わが国経済は、世界の政治的不安定要素や世界経済の減速傾向を受け、成長の伸びがやや鈍化した年となった。

 このような中で、JEMAの重電機器と白物家電機器を合わせた19年度上期生産実績は2兆6840億円、前年同期比96.2%となった。白物家電では消費税増税の影響が前回の増税時と比較して、年度全体では軽微であったとみているが、引き続き注視していく必要がある。

重点3項目に注力

 JEMAは、わが国電機産業の持続的発展に向け、次の三つの重点項目を掲げ、「電機業界の持続的成長戦略の推進」「エネルギー・環境革新戦略の推進」「新たなものづくり、サービス産業の創出の推進」―の活動を展開していく。

 「電機業界の持続的成長戦略の推進」については、わが国が目指すSociety5.0の実現に向けて、電機業界としても議論を深め、社会課題解決につなげるべく、積極的に推進していく。

 昨年はJEMAが中心となり、モーター駆動システムの省エネ国際会議、いわゆる「EEMODS」を9月に東京で開催した。日本初の開催で、わが国省エネ政策の優位性をアピールし、盛況だった。

 「エネルギー・環境革新戦略の推進」については、優れたエネルギー・環境技術を有する強みを生かし、エネルギーの供給と消費の両面から貢献していくことが、JEMAの果たすべき役割だ。昨年は、政府の「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略案」に関して、JEMAは、幅広い革新的技術の開発や低コスト化による円滑な社会実装に取り組んだ。

脱炭素化に賛同

 イノベーションによって脱炭素化にチャレンジする同ビジョンに賛同するとともに、原子力分野のイノベーションや、電力分野の重点的な取り組みについて意見を発信した。

 JEMAは省エネ、再エネ、エネルギーマネジメントといった分野で、機器とシステムの両面から最先端技術を駆使し、今後も世界の低炭素社会実現に貢献していく。

 「新たなものづくり、サービス産業の創出の推進」については、日本の強みである製造現場のデータをはじめとした様々なデータがつながり、有効活用されることで、生産性の向上や新たな付加価値が創出されるConnected Industriesの実現に向けて、活動を展開している。

「IIFES」拡大

 昨年は、システムコントロールフェア/計測展TOKYOをIIFESと名称変更し、11月27日から3日間、会場を大幅に拡大した第1回となる「IIFES2019」を開催した。IoT関連製品やAI(人工知能)技術、サービスを展示し、Connected Industriesを具現化する展示会となった。

 電力分野ではVPP、HEMSをはじめ太陽光発電システム、蓄電池、燃料電池など電力需要家エネルギーリソース機器市場拡大などのビジネス創出、白物家電分野ではスマート家電標準化推進について、政府と一体となって取り組む。

 いよいよ今年、東京オリンピック・パラリンピックが開催される。これらの大きなイベントも好材料に、景気回復の継続に期待するとともに、JEMAとしても電機産業のプレゼンスを高めていく機会にしていく。