2022.05.17 デノン初のネットワーク再生対応フルサイズアンプCDプレーヤーの新製品も投入

プリメインアンプ「PMA-900HNE」(下)、CDプレーヤー「DCD-900NE」


 デノンは、HEOS Built-inプリメインアンプ「PMA-900HNE」と、CDプレーヤー「DCD-900NE」を6月下旬に発売する。価格(税込み)はアンプが13万2000円、CDプレーヤーが7万7000円。
 900シリーズは、デノンのHi-Fiコンポーネントのラインアップにおいて、ミドルグレードに位置付けられる製品。先代にあたる800シリーズは、プリメインアンプ、CDプレーヤー、ネットワークオーディオプレーヤーの3モデルで構成されていたが、音楽ストリーミングサービスの普及と高音質化、プリメインアンプに対するニーズの変化を踏まえ、900シリーズはネットワーク機能を搭載したプリメインアンプとCDプレーヤーという2モデルの構成とされた。そして、音質に影響を与えずにデジタルオーディオ回路をプリメインアンプに統合するための技術・ノウハウの蓄積が進んだことも、この仕様変更を後押しした理由に挙げられる。
 PMA-900NEは、デノンのすべてのアンプに共通するテーマである「繊細さと力強さ」の高い次元での両立のために、パワーアンプにAdvanced High Currentシングルプッシュプル増幅回路を採用している。ここで用いられるHigh Currentトランジスターは、一般的なトランジスターの3倍のピーク電流供給能力を備えているため、多数の素子を並列駆動して大電流を得る手法において問題となる素子の性能のバラツキによる音の濁りを解決し、楽音の表情までも繊細に描き出す表現力を実現することができる。
 さらにPMA-900HNEは、デノン110周年記念モデル「PMA-A110」の構成に準じて、従来の差動3段アンプと比較して発振に対する安定性に優れる差動2段アンプ回路を採用し、より素直な音質傾向となった。プリアンプも刷新され、こちらもPMA-A110と同様の可変ゲイン型プリアンプと電子制御ボリュームを採用し、ノイズレベルの劇的な改善を果たしている。
 さらに、オーディオ回路に使用される高音質コンデンサーや、抵抗などのパーツの一部にはPMA-A110のために開発されたデノン専用のカスタムパーツを使用。音質担当エンジニアとサウンドマスターによる入念なサウンドチューニングを行うことにより、デノンの理想とする「Vivid & Spacious」なサウンドを実現している。
 Advanced High Currentシングルプッシュプル回路の能力を最大限に引き出すため、電源回路には大型のEIコアトランスとPMA-900HNE専用に新たに開発されたカスタム仕様の大容量(8,200μF)のブロック電解コンデンサーと、スイッチングスピードが速く整流ノイズが少ないショットキーバリアダイオードを採用。クラスを超えた重厚さとタイトさを兼ね備えた低音再生を余裕の電源供給能力で支えている。
 フォノイコライザーはMM/MC両方のカートリッジに対応。MM/MCの切り替えはリレーよって行うため、基板上の余分な信号ラインの引き回しを必要とせず、繊細なアナログ信号をより純粋に増幅することができる。PMA-900HNEではOPアンプをアップグレードし、音質にさらに磨きをかけている。
 PMA-900HNEは、デノンのフルサイズHi-Fiアンプとしては初のHEOS Built-in製品。Amazon Music HDやSpotify、AWA、SoundCloudなどのストリーミングサービスやインターネットラジオをはじめ、ローカルネットワーク上のミュージックサーバー(NAS/PC/Macなど)やUSBメモリー、AirPlay 2対応機器、ブルートゥース機器など、多彩なソースから音楽を再生することができる。さらに同一のネットワークに接続した他のHEOS Built-inデバイスに同機で再生中の音楽を配信することもできる。セットアップ、操作は無料のHEOSアプリで誰でも簡単に行うことができ、Alexaによる音声操作にも対応している。
 また、192キロヘルツ/24ビットまでのPCM信号に対応する光デジタル入力を3系統、同軸デジタル入力を1系統装備している。デジタル入力されたPCM信号は、デノン独自のデータ補間アルゴリズムによるアナログ波形再現技術「Advanced AL32 Processing Plus」によって処理され、デジタル化される前の本来のアナログ波形に復元され、後段のアンプ回路へと送り出される。デジタル回路とアナログ回路を同じ筐体内に同居されることで、アナログオーディオ信号に悪影響を及ぼすことがあるが、PMA-900HNEではデジタルオーディオ基板をシールドケースに収め、繊細なアナログオーディオ信号への干渉を排除している。さらに、ネットワーク、Wi-Fi、ブルートゥースを使用しない場合には個別に無効に設定することができ、より高音質な再生が可能になる。
 DCD-900NEは、音楽CDの再生に加えて、CD-RやCD-RWに記録したMP3やWMAファイルの再生にも対応している。さらにフロントパネルに装備されたUSB-A端子は、USBメモリーに記録されたDSD(2.8メガヘルツ/5.6メガヘルツ)ファイル、および最大192キロヘルツ/24ビットまでのハイレゾ音源などの音楽ファイルの再生に対応している。PMA-900HNE同様にアナログ波形再現技術「Advanced AL32 Processing Plus」を搭載しており、原音に忠実な再生を実現している。
 DCD-900NEは、PMA-900HNEの奥行きに合わせて筐体(きょうたい)が大型化された。これにより、内部のスペースに余裕が生まれ、基板のレイアウトや回路設計を一新。電源回路のレイアウトや基板上の左右チャンネルの対称性が最適かされ、音質が向上している。D/Aコンバーターにはクラスを超えた高性能な32ビット対応D/Aコンバーターを採用。差動電流出力タイプのD/Aコンバーターであるため、ノイズに強く、I/V変換回路での独自の音作りが可能になるというメリットを備えている。D/Aコンバーターからの出力信号を受けるI/V変換アンプ回路と差動合成アンプ回路に従来よりも低ノイズかつスルーレートの高い高性能なOPアンプを採用し、さらなる高音質化を実現した。また、筐体の大型化による基板上のレイアウト変更は、左右チャンネルだけではなく、プラス信号とマイナス信号の対称性も改善されており、サウンドステージの広がりや正確な音像定位にさらに磨きがかかった。
 アナログオーディオ用電源回路は、DCD-A110などの上位モデルと同様に、アナログオーディオ回路への電源供給に最適化されたフルディスクリート設計へとアップグレードされた。電源供給の要であるブロックコンデンサーには、試作と試聴を繰り返してサウンドマスターが厳選したデノンカスタムの大容量(3300μF)ブロックコンデンサーを採用。クリーンで安定した電源供給を可能にし、重厚さと繊細なディテールが絶妙に調和したサウンドを実現している。
 音質に影響が大きいパーツには、ハイエンドモデルにも使用されている高音質パーツを数多く採用。これらは、音質担当エンジニアとサウンドマスターが部品メーカーの協力の下で試作と試聴を繰り返し、長い時間をかけて作り上げてきたデノン独自のカスタムパーツだ。また、カーボン被膜抵抗やメルフ抵抗、薄膜高分子積層コンデンサーなど高品位なパーツをアナログオーディオ出力回路やデジタルオーディオ回路に多数使用している。
 ディスクを回転させて信号を読み取るCDプレーヤーにとって振動は音質を悪化させる大敵だが、デノンは「ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクション」と呼ばれる制振構造により、この問題を解決している。これは、振動源である電源トランスをフットに近づけて配置することで不要な振動を外部へと逃がし、周辺回路への影響を防ぐ構造。また、ドライブメカニズムを筐体中央部に配置し低重心化することで、ディスクの回転による内部振動を効果的に吸収し、外部からの振動のドライブメカニズムへの影響も抑制している。そして。ドライブメカニズムや電源トランス、シャーシの大きな重量を支えるフットには、高密度かつ高剛性なリブ入りフットを採用。上位モデルにも使用されているフットによって防振効果をさらに高めている。
 アナログオーディオ出力端子には新たにL/R独立タイプのピンジャックを採用し、余裕のある間隔で配置。大型のRCAプラグを使用したケーブルも容易に着脱できる。アナログ出力端子と、同軸デジタル出力端子には経年変化や信号の劣化を防止する金めっき加工を施し、高品位な接続を実現している。