2022.06.14 メタネーション事業化に加速シェルと連携、東京ガスと大阪ガス

30年、都市ガス販売開始が目標

サプライチェーンなど構築へ

 東京ガスと大阪ガスは6日、欧州の石油メジャー、シェルグループと、都市ガスを脱炭素化する技術「メタネーション」の事業化に向けて共同で検討を始めると発表した。両社とも、2030年にはメタネーションによって生産した都市ガスの販売を開始するとの目標を掲げている。グローバルに展開するシェルの強みを生かし、サプライチェーンなどの構築を加速させていく。

 メタネーションは、水素と二酸化炭素(CO₂)から都市ガスの主成分であるメタンを合成する技術。再生可能エネルギー電力などで製造した水素を利用すれば、都市ガスをカーボンニュートラルにできる。

 両社が覚書を締結したのは、シンガポールを拠点にする子会社のシェル・イースタン・ペトロリアム。同国内で石油関連製品事業や海外投資、脱炭素関連ビジネスなどを手掛けている。

 メタネーションを社会実装していくためには「さまざまなプレーヤーが盛り上げ、広めていくことが不可欠。ガス業界としても連携してやっていくべき」(東京ガス)との理由から、都市ガス大手2社が協力した。

 東京ガスは長らく、シェルが調達した液化天然ガス(LNG)の供給を受けてきた。19年からは、使用時までに発生するCO2を実質ゼロにしたと見なせるカーボンニュートラルLNGの供給を受け、日本で先駆けて販売している。シェルが世界各地で展開する環境保全プロジェクトでカーボンオフセットしたLNGだ。

 連携については半年ほど前にシェル側から打診があり、協議を重ねてきた。今後3社で合成メタンの開発、導入について実現可能性の検討や事業性の評価などに取り組む。

 メタネーション技術自体は日本側が先行しているとされる。東京ガスと大阪ガスは30年時点で、メタネーションによる都市ガスを、都市ガス全体の販売量の1%程度、導入することを目標としている。東京ガスは20年度実績ベースで約8000万立方メートル、大阪ガスで同約6000万立方メートルに相当する。

 両社ともに実用化に近いのが、サバティエ反応を利用した技術だ。触媒を使い、温度500度程度で水素とCO₂からメタンを合成するもので、技術的には既に確立しているという。

 東京ガスは30年には1時間当たり約2万立方メートルを生産する大規模実証を始める計画で、適地として海外を検討している。メタンの合成に必要なCO₂フリー水素をつくる再エネ電力を得やすいことなどが理由で、適地選定などにもシェル側の協力を得られる可能性がある。

 また、東京ガス、大阪ガスはそれぞれシェルグループと、水素やCCUS(CO₂の回収、利用、貯留)など幅広い脱炭素技術についても事業化などの検討を進めていく連携を結んだ。