2022.06.28 水素供給網構築 元売り検討 出光興産 中部圏でJERAと共同

京浜ではエネオス

 石油元売り大手が、化石燃料に代替する次世代燃料として水素の国内での供給網整備の準備を急いでいる。多くの需要が見込まれる産業集積地において、臨海部に立地するエネルギー企業などと共同で検討作業を開始した。

 出光興産が先行して供給網構築を目指すのが中部地方の伊勢湾地区だ。16日、東京電力グループと中部電力が出資する発電会社JERAと、共同検討していくと発表した。

 出光興産グループは伊勢湾岸沿いに、首都圏を上回る原油処理能力を持つ。グループ最大の日量25万バレルを処理できる昭和四日市石油・四日市製油所(三重県四日市市)に加え、同16万バレルの愛知製油所(愛知県知多市)がある。

 ただ、脱炭素の流れでガソリン需要などが減少する中、製油所には変化が求められている。出光興産は製油所を低炭素化に向けた新たな拠点へ転換する「カーボンニュートラル・トランスフォーメーション・センター構想」を掲げる。

 そうした転換に向けて、同地区の特性を生かすために着目したのが水素だ。

 中部圏では、2025年に年4万トンの需要が、30年には11万トン規模に拡大するとの試算もある。地元企業などで作る中部経済連合会によると、集積する製造業の工場での利用や、生産拠点などがあり比較的普及が進む燃料自動車での利用も望める。出光興産などの共同検討について「地域全体で描いた構想が、より具体化されていく」(中部経済連合会の担当者)として期待も大きい。

 利用が本格的に広がれば、発電所や工場地帯などの需要地では、近接した臨海部に大規模な供給設備の整備が必要になる。既存の製油所の貯蔵タンクなどの設備が水素向けに代替可能かなど具体的な検証を進めるほか、さまざまな技術が検討されている水素の輸送手段について、それぞれコスト面などを分析する。

 共同検討するJERAも湾岸沿いに、LNG(液化天然ガス)を燃料とする川越火力(三重県川越町、最大出力480万kW)など火力発電所6カ所、LNG受け入れ基地3カ所を持つ。同社は、発電時にCO₂を出さない「ゼロエミッション火力」を掲げる一環として、既設のLNG火力発電所で水素の混焼発電技術の開発を進める。技術の実用化を目指しており、水素の供給先となる可能性もある。両社は25年3月末までに協業可能な事業や取り組みなどを精査した上で基本合意の策定を目指す。

 元売り最大手のENEOS(エネオス)も4月から、JERAなどと組み、首都圏の京浜臨海部で水素やアンモニアの供給網構築に向けた検討を始めた。

 需要規模の大きい関東エリアの中心に位置するという京浜臨海部のメリットを生かし、海外で製造したCO2フリー水素の受け入れ拠点や、近隣の大規模需要家への供給拠点として整備する検討を進めている。