2022.06.28 系統直結の蓄電システム整備NTTアノードや九州電力など 太陽光発電、出力制御相次ぐ九州で

 再生可能エネルギー開発を手掛けるNTTアノードエナジー(東京都千代田区)は九州電力や三菱商事と連携し、出力制御を受ける太陽光発電所の余剰電力を蓄電して卸電力市場などで取引する事業に乗り出す。皮切りとして2023年2月、福岡県内に系統と直結した専用の蓄電システムを設置する。これまで抑制されていた再エネ発電量を有効活用できる。

 変動電源である再エネ設備の整備で先行する九州では、春や秋などの晴天時に発電量が需要を上回るため、電力会社が一部の太陽光発電に対し、一時的に発電を抑制するよう要請する出力制御が出されている。電力の需給バランスが崩れてしまい、大規模停電の原因になる恐れがあるためだ。

 九州電力管内で21年度に出された出力制御は82回に及び、22年度はこれまでに24回出されたという。4~5月には、四国電力や東北電力管内などでも初めて発令が必要になるなど、対応地域が拡大している。

 系統に直結した蓄電システムで余剰分をためることができれば、制御が必要になる太陽光発電を減らせる。また、蓄電した電力を需給調整市場や容量市場などで取引することで有効活用でき、電力の安定供給を支える調整力の確保にもつながる。再エネのさらなる導入拡大に寄与できることも大きい。

 こうした背景から、3社は23年2月に福岡県田川郡内に蓄電池などを設置し、系統から蓄電できるシステムを構築する。3社の関連施設の敷地などを中心に「コストや周辺環境などを鑑みて最適な場所」(NTTアノードエナジー)に設置し、出力制御が出された時間帯にだけ充電する。

 NTTアノードエナジーが蓄電システムの構築や保守などを担い、九州電力が電力の供給や市場取引のノウハウを提供する。三菱商事はグループ会社を通じてシステムの導入などを支援して連携する。収益化のためには蓄電池コストなどがポイントになる。

 九州電力では22年度中に計7億~8億kWhの出力制御が必要になると見込む。一方、田川郡で設置するシステムで蓄電できる電力量は4200kWhほどで、事業は「スモールスタートから進んでいく」(九州電力)。

 田川群では実証的な意味合いも含み、得られたデータなどを活用して今後展開する事業規模などを検討していく方針。出力制御が出される地域が広がっていることから、九州以外への拡大も視野に入れている。