2022.06.28 東邦ガスなど、AI活用の地域冷暖房の実証名古屋・栄 稼働制御しCO₂削減

 東邦ガスなどのグループは、AI(人工知能)を活用した地域冷暖房システム「AIちれい」を開発し、名古屋市の中心街、栄地区で5月から実証試験を始めた。エリア単位でまとめて冷暖房用のエネルギーを製造・供給するシステムで、需要に連動して稼働する機器台数を制御する。運転を効率化し、排出する二酸化炭素(CO₂)抑制につなげる効果がある。

 ほかに加わるのは設計大手の日建設計グループ、住友商事マシネックス(東京都千代田区)、AI開発のスタートアップ、アラヤ(東京都港区)。

 地域冷暖房は1970年代から都市部を中心に導入が進み、現在は全国に130件を超える施設があるという。ビルの地下などに設備が設置されているが、約9割は導入から20年を経過しており、省エネなどの性能が低下。脱炭素の流れの中でエネルギー使用を効率化するため、冷暖房の使用状況を反映させながら供給機器を制御することが重要視されている。

 東邦ガスは名古屋市を中心に直営する10エリアのほか、共同運営する6エリアで地域冷暖房を稼働させている。今回実証するのは、栄地区にある二つのシステムのうちの一つだ。

 05年3月から供給を始めたシステムで、近隣の商業ビルや県内有数の地下街の空調などを担っている。都市ガスを活用した吸収冷温水機と呼ばれる機器が複数台設置され、配管に水を巡らせて蒸発や凝縮を繰り返すことで、冷暖房のエネルギーを供給する。機器の稼働台数を制御するのが、今回開発されたAIちれいだ。こうした実証は初めてという。

 AIちれいは、気象の状況やビルでの催しの有無などが人流を増減させることから、冷暖房需要に影響を与えるデータとして取り込む。「変数要素になるさまざまなデータのうち、どういった変数が、最適化された運転に対して相関性が高いかなども検証していく」(東邦ガス)。

 過去の需要実績値なども参照しながら数時間先の需要量を予測し、必要な配管に流す水の温度や送水量などを推定。必要最小限の機器の稼働台数を指示するという。実証期間は5月~24年3月。季節ごとに需要が大きく変わるため、2シーズンをめどに実証を続けて精度を高めていく。机上の模擬運転では、過去の需要実績を99%予測できたことを確認しているという。

 東邦ガスは「実証でCO₂削減に期待する効果が出るなど順調に運用できれば、当社が運営している各地の地域冷暖房への展開も検討していく」としている。