2022.07.21 パワエレ向け半導体材料で新手法 AlGaNめぐり東大教授ら
試作した AlN/AlGaN HEMT 素子特性評価
次世代パワーエレクトロニクス用の半導体材料として期待されるAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)について、高品質で安価に合成する新手法を開発したと、東大の藤岡洋教授らが発表した。
メタバースに展開も
SiCやGaNに関する研究開発が進み、実用化が進む。一方、軽元素で構成される半導体も有望視されているものの、良好な特性を持つトランジスターは作製できなかった。また、高価な結晶成長手法が使われ、製造コストも課題だった。
こうした中、藤岡教授らは、結晶にシリコン(Si)原子を導入することで、新しい材料が合成できることを見出した。これを利用してトランジスターを試作。高性能のトランジスターが実現できることを実証した。
また、集積回路やディスプレー製造などで広く活用されている薄膜形成法(スパッタリング法)を活用。低コストで、環境負荷の低い製造ができそうだという。
記者会見した藤岡教授によると、成功のカギの一つは、窒素の扱い。窒素は一般に気体のほうが安定するため、固体にするのが難しいという課題があるが、グループのノウハウでクリアした。研究の端緒は、ディスプレー関連の研究。大面積のLEDに取り組む中で、着目した。
パワエレ向けのさまざまな半導体材料は、周波数帯などの特性から複数のすみ分けが進んでいくと考えられ、今回のような素子ですべてをまかなうことは想定されていない。ただ、性能を発展させていけば、Siの領域に入っていける可能性があるという。「劇的な価格低下につながる可能性もあり、ゲームチェンジャーになりうる」と藤岡教授。
大画面のディスプレーや、メタバース向けのデバイスなどにも適用できる可能性がある。
(22日の電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)