2022.09.06 電力逼迫対応でDR 先駆的企業のエネチェンジが講演 期待がかかる家庭内の節電

多くの来場者が足を止めていたエネチェンジのブース

 電力の需給逼迫(ひっぱく)を受け、国を挙げて取り組み始めた節電。その普及策として期待されているのが、家庭向けのデマンドレスポンス(DR)サービスだ。需要の調整力を生み出す仕組みで、国内で先駆的に推進してきた企業の一つが、電力比較サイト運営のENECHANGE(エネチェンジ、東京都中央区)。山口達也SMAP推進室マネージャーが、総合展示会「スマートエネルギーWeek秋」(8月31日~9月2日)で講演し、事業展開について説明した。

 同社は2015年4月に設立された。創業時から「エネルギーの4D」をうたい、自由化、デジタル化、脱炭素化、分散化の4領域の事業に特化してサービスや製品を展開してきた。

 電力小売事業者に提供するサービスとして、家庭向けDR事業の実証を19年に開始。電力料金の割引などインセンティブを受け取りながら家庭ごとに自発的に電力の使い方を工夫してもらう行動変容型のDRだ。

 今年6月下旬に季節外れの高温が続いた影響などで、政府は「需給ひっ迫注意報」を初めて発令した。その経験から政府は電力不足への対策として、家庭などでの取り組みを「節電ポイント」として支援することになった。山口氏はこうした経緯に言及し、「ようやく波がやってきた」と語った。

 同社のシステムを新電力などへ提供し、新電力は顧客に参加を募り、節電キャンペーンなどを展開する。参加者は右肩上がりで増え、22年夏期には約15万人が加わった。23年冬期には約40万人に増加する見通しだという。

 山口氏は「再エネ拡大の流れは止められない。ただ、どうしても供給の不安定性が出る」とした上で、「発電側だけが頑張っても需給は厳しくなってくる。需要サイドもしっかりと発電量に対しリアクションしていかなければ、島国の日本で再エネを増やしながら需給をマネジメントし、停電などを起こさないままでいることは難しい」と意義を強調した。

 同社は21年、スマート機器制御型のDRの実証にも着手した。リモコンやコンセントのプラグに取り付けた機器で電源のオンオフや設定温度などを切り替えて消費電力を抑える。

 山口氏は「冬や夏の電力逼迫時には需要家側が調整力を作る活動が当たり前になる社会を、30年以降に向けて、いかにつくっていくかが重要になる」と述べた。