2022.09.22 【デジカメ特集】ミラーレスが主役に躍り出る

ミラーレスカメラがデジカメ市場をけん引

 デジタルカメラでは、ミラーレスカメラが市場の主役へと躍り出ている。日本だけでなく、グローバルで見ても出荷台数、金額ともにミラーレスは今年1~7月までの累計で前年を上回っており、特に高単価化が進んで金額ベースでの伸びが大きい。今後も市場をけん引していく見込みで、メーカー各社は戦略機種の投入を加速している。

 カメラメーカー各社が加盟するカメラ映像機器工業会(CIPA)の統計によると、今年1~7月の累計で、ミラーレスの出荷台数は前年同期比17・6%増の約212万台、出荷金額は同47.9%増の約2631億6400万円だった。

 そのうち、日本向けは約21万台を占め、前年同期から3割近く伸長。金額では6割以上伸び、一眼レフとコンパクトデジカメが出荷台数、金額ともに前年を2桁以上割り込む中で、デジカメ全体の金額を2割以上伸ばす原動力となった。

 ミラーレスは、高性能・高画質化が進んでおり、小型なボディーと合わせて、使い勝手の面からも市場で人気が高い。さまざまな撮影シーンに対応するために交換レンズを充実させることも各社重視しており、プロの写真家にとっても選択肢が広がっている。レンズ交換式カメラ用レンズ全体では1~7月、出荷台数は前年同期をわずかに下回る約530万台となったが、レンズも高単価化が進んでいることで、金額は約3割伸びている。

 中でも交換レンズは日本向けの伸びが目覚ましく、台数で1割、金額で4割成長している。スマートフォン搭載カメラの高性能化が進む半面、スマホでは撮影できない、カメラにこだわりを持った層も着実にいる。そうしたユーザー層がより付加価値の高いカメラを求める傾向が強まっており、交換レンズも複数台持って撮影するケースが増えているようだ。

 また、ミラーレスは、映像制作現場での利用も視野に入れた機能強化が進んでいる。富士フイルムが29日に発売するミラーレスの新製品「X-H2」では、APS-Cセンサー搭載のミラーレスカメラとして初めて、8K/30Pの動画撮影に対応。YouTubeなど映像制作に対するニーズが広がりを見せていることもあり、富士フイルムに限らず、各社は動画撮影への対応を強化している。

 コンパクトデジカメの出荷台数は1~7月で前年同期から4割ほど減っている。こうした流れは今後も続くと見て、主力となって市場をけん引するミラーレスへの注力姿勢を各社は鮮明にしている。

富士フイルムの主力製品・Xシリーズ旗艦モデル「X-H2」

APS-Cセンサーを搭載したミラーレスカメラ「Xシリーズ」のフラッグシップモデル「X-H2」(29日発売)

 富士フイルムは、APS-Cセンサーを搭載したミラーレスカメラ「Xシリーズ」から、同シリーズ史上最高画質を実現するフラッグシップモデル「X-H2」を29日に発売する。スポーツ選手や野鳥など動きの速い被写体の撮影に適した「X-H2S」(7月発売)と合わせたXシリーズの〝ダブルフラッグシップモデル〟で、写真家や映像クリエーターの幅広いニーズに応える。

 X-H2は、新開発の約4020万画素のセンサーと、画像処理エンジンを搭載し、高い解像力を生かした静止画や動画の撮影が可能。最速18万分の1秒のシャッタースピードやISO125の常用感度を実現し、写真の撮影領域を拡大する。

 Xシリーズとして初めて、4倍の解像力と忠実な色再現による撮影が可能な「ピクセルシフトマルチショット」を搭載した。この機能では、ボディー内手ブレ補正機能を用いて約1.6億画素の画像を生成することが可能。文化財のデジタルアーカイブ用途などに最適だ。

 肌のレタッチを自動で行う「スムーススキンエフェクト」も搭載しているため、ポートレート写真などで行うレタッチの手間を軽減できる。さらに、ディープラーニング技術の活用により、オートホワイトバランスも進化している。人工知能(AI)がオレンジがかった暖かみのある電球色を正確に識別することが可能だ。

 オートフォーカス(AF)もディープラーニング技術を用いて開発した。動物や鳥、車、バイク、自転車、飛行機、電車をAIが検出し、ピントを合わせたまま狙った被写体を自動的に追尾するため、シャッターチャンスや構図に集中して撮影できる。

8K/30Pの動画撮影対応

 APS-Cセンサー搭載のミラーレスカメラとして初めて、8K/30Pの動画撮影に対応。X-H2Sと同じ放熱構造を採用し、8K/30Pの動画を約160分撮影できるなど、プロの映像制作ニーズにも応える。このほか、8Kの豊富なデータ量から高品質な4K映像を生成する「4K HQ」モードも新たに搭載。高画素センサーを生かした多彩な機能を盛り込んだ。

 Xシリーズ用交換レンズでは、中望遠の56㎜の焦点距離を持つ「フジノンレンズ XF56㎜F1.2 R WR」も29日に発売。高い解像性能と優れた近接撮影性能を発揮するだけでなく、美しいボケ味も実現する。

 動体撮影に適したX-H2Sと、高画質撮影が可能なX-H2の〝ダブルフラッグシップモデル〟、新レンズを含めた計40本の豊富なレンズラインアップを通じてX-シリーズの撮影領域と映像表現の幅を広げていく。