2022.09.28 【関西エレクトロニクス産業特集】大阪モノづくり観光推進協会が町工場を観光資源化 修学旅行生向けに工場見学、年間6000人を受け入れ

 町工場を観光資源とする全国的にめずらしい取り組みが、東大阪市で進められている。大阪モノづくり観光推進協会は年間約6000人の修学旅行生を受け入れ、市内のモノづくり企業約70社で工場見学を実施。若者にモノづくりの技術を伝え、地元の観光を盛り上げている。

 町工場を観光資源としてアピールし始めたきっかけは、同協会が事務局を構えるホテルセイリュウ(東大阪市)が抱えていた、修学旅行生を受け入れる際の課題だった。

 同ホテルは、京都や奈良などの観光地へ足を延ばすのに便利な立地。しかし、市内での観光や回遊につなげることができず、宿泊拠点にとどまっていた。

 そこで、市の産業の活性化につなげるため、市の大きな特長であるモノづくりをアピールすることに。同協会の前身となる団体が2008年に設立、12年に一般社団法人として同協会を設立した。

 現在、全国の旅行会社を通じて年間約6000人の修学旅行生を受け入れ、東大阪市を中心に府内のモノづくり企業約70社の工場見学をアレンジしている。

 生徒を1班最大20人に分け、工場の規模に合わせて約1時間の訪問を調整。製造現場を見せるだけでなく、各社の技術やこだわり、思いなども伝えている。

 持続可能な開発目標(SDGs)の観点から、環境に配慮した取り組みや産業廃棄物のリユース、働き方改革について紹介することもある。コロナ禍では、オンラインでの工場見学を実施。実地に近い見学が実現するよう、工場とのライブ中継で、生徒たちとの双方向コミュニケーションを叶えた。

 参加した生徒たちからは、職人のモノづくりへの誇りや技術から製造業へのイメージが一新されたという感激の声が届くこともあり、参加企業にとってもモチベーションにつながっているのだという。

 同協会の足立克己専務理事・事務局長は「物見遊山ではなく『国の光を観る』のが、観光の本来の目的。参加企業は、モノづくりに対する深い思いを持つところばかりだ。今後、賛同いただける企業が増え、市内の観光を盛り上げることができれば」と力を込めた。