2023.01.01 【AV総合特集】’23展望  カーエレクトロニクス

市販カーナビは大画面化が進んできており、車種を問わず9インチ以上の大画面が取り付けられる製品も増えてきた

カナック企画は純正ナビや純正オーディオでも良い音が手軽に出せるサウンドアップコードで新たなエンターテインメントを訴求するカナック企画は純正ナビや純正オーディオでも良い音が手軽に出せるサウンドアップコードで新たなエンターテインメントを訴求する

安心安全をさらに追求
エンターテインメント性も

 カーエレクトロニクス業界は2023年、自動車業界が直面しているCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、エレクトリック)の流れを見極めた対応が求められる。22年は半導体不足をはじめとした部材不足の影響を受けた自動車業界だが、23年も引き続き不透明な状況が続く見通しで、市場の動きに柔軟に対応しながら新たな価値を提案することが不可欠になる。市販カーエレ市場は安心安全とともに移動時のエンターテインメントを追求する動きがさらに加速しそうだ。

 22年の国内自動車業界は半導体不足と部材料不足に翻弄された1年だった。依然として新型車の納期遅れなどが続いているほか、市販カーエレクトロニクスも部材不足から製品供給で苦労したところが目立った。市販カーナビゲーションシステムなどは、夏以降から製品供給にめどを付けてきているが、引き続き厳しい環境下での生産が続いているのが実情だろう。

 そうした中で自動車業界は、電動化の流れが加速し、主要自動車メーカー各社は電気自動車を相次いで投入するとともにハイブリッド車などが中心の提案が進んできている。合わせて安心安全が当たり前になっている。

 市販カーエレクトロニクス市場でみると、最近の新型車は後から手を付けられる箇所が限られてきているため、市販にしかできない製品展開がこの数年の流れになってきている。

 市販カーナビ各社の動きではこの1~2年でエンターテインメントに注力しているところが目立つ。これまではナビ性能と安心安全に焦点を当てた開発が進んでいたが、ここ数年はナビの基本性能の向上だけでなく市販ならではの機能強化が鮮明になってきた。

 最近は純正ナビや純正オーディオの性能が以前よりも飛躍的に高まってきているため、純正品で満足してしまう人が増えているという声もある。半面でメーカーオプション品は高額な上、市販品のような遊び心を持った機能は少ない。そこで、市販ならではの特徴と、純正品で不満になっているエンターテインメントを重視した開発にかじを切っているところが多い。

 自動車メーカーはインターネットにつながり、さまざまな情報が得られるコネクテッドカーを提唱するが、市販メーカーは市販にしかできないコネクテッドに取り組む。その一つがエンターテインメントだ。この流れは23年もさらに加速していくとみられる。

 一時期は市販メーカーも新型車をターゲットにした製品が目立ったが、ここ数年は既販車を意識した製品展開も進む。国内では約6000万台の既販車があり、最近は車齢が伸びているため、市場に出ているクルマをターゲットにすることで需要が掘り起こせるからだ。1台のクルマに長く乗るユーザーも増えているほか、中古車で購入したユーザーへの提案も重要になってきている。

 純正品で満足しがちなユーザーに向けては市販品の魅力を伝えていくことも重要になってくる。市販製品の良さを感じているのは、若い時代にクルマにこだわってきた中高年の男性が多く、あとは一部の自動車好きの若者にとどまっている。

 より多くの世代に、ドライブの楽しさを実感できるよう市販製品ならではの機能を伝えていくことが市場成長に向けたカギになるだろう。

 22年から行動制限がなくなったこともあり、外出や観光に出向く人も増えてきた。従来よりもマイカーを活用する動きも出てきているため、市販製品を伝えるチャンスでもある。既に主要カーエレメーカーは、カー用品店店頭にデモカーを持ち込んだイベントやショッピングモールでの体感イベントなども進めている。23年はメーカーと流通が一体となって、新たな需要を掘り起こしていくことが求められる。

市販ナビも強化

 市販ナビメーカーはエンターテインメントの強化をキーワードに、新型車、既販車問わずにドライブを安全に楽しめる機能や製品の展開を加速している。

 市販ナビでシェアの高いパイオニアは、車内Wi-Fiをいち早く提唱し、自宅でもドライブ中でもインターネットコンテンツを自由に楽しめる提案を進める。昨年発売した、音声のみで対話しながら操作するナビ、ドライブレコーダー、Wi-Fiを一体化した新車載端末「NP1」も新世代の機器として訴求を進めている。

 パナソニックは、車種を問わず大画面ナビが装着できるストラーダF1シリーズの22年モデルでエンターテインメント機能を強化。自宅のレコーダーとネット接続し、車内でも録画番組などをより簡単に楽しめるようにした。

 JVCケンウッドは、ケンウッド彩速ナビで、高画質とエンターテインメントを訴求。アンドロイドスマートフォンをワイヤレスでナビと接続しコンテンツが楽しめるワイヤレスミラーリングにも対応した。

 アルパインは、いち早く車種専用の大画面ナビ「ビッグX」シリーズを企画開発し展開してきた。車種専用ナビをはじめ、大画面ディスプレーオーディオ、デジタルルームミラー、リアモニターなど周辺機器も充実する。ナビやオーディオ取り付けキットを手掛けるカナック企画は、純正ナビやオーディオに配線処理なしにアンプやウーハーが接続できる純正サウンドアップ用コードを発売。純正の音で諦めてしまっている人へ訴求を始めている。

 エンターテインメントに加え、安心安全ではドライブレコーダーも引き続き堅調だ。あおり運転などが依然として発生しており、最近は前後カメラを搭載したモデルが人気。夜でも高画質に撮影できる国産メーカーモデルが注目され、主要各社は単体で動くモデルに加え、カーナビと連動できるモデルを用意しナビとセットで提案している。各社は純正品では補えない性能や機能を前面に出していくことで多様化する要望に応えていく考えだ。

 23年のカーエレクトロニクス市場は、これまで以上に市場の需要をみた製品開発と提案が必要になってくる。