2023.01.11 【電子部品総合特集】2023年 電子部品需要展望 前半は厳しい市況を想定 半導体不足緩和で車載用など需要増へ
電子部品の世界需要は、2020年夏場以降の回復基調が21年以降も継続し、22年も堅調に推移した。アプリケーション別では、コロナからの経済回復を背景に、産機関連や車載関連、ハイエンドスマートフォン向けなどの需要が増大した。特に日系電子部品メーカーにとっては22年春以降の急速な円安進行も出荷額を押し上げた。一方、22年夏場以降はやや受注が陰りを見せるようになり、23年前半の電子部品市場は弱含みでの推移が想定されているが、年央以降の市場回復などを視野に23年トータルでは成長の持続が予測される。
電子部品の世界需要は、世界景気回復の波に乗り、16年から18年前半にかけて好調に推移した。だが、米中摩擦激化の影響から18年夏以降、中国での設備投資需要にブレーキがかかり、18年秋以降はスマホの需要も減速。18年の年末ごろからは一段と市況が悪化し、19年に入ると、それまで堅調だった車載用電子部品需要にもブレーキがかかった。
19年の世界の電子部品市場は、特に産機・車載関連需要の落ち込みが厳しく、前年割れの状況が続いた。
20年は、年初段階では市況回復に伴う電子部品需要反転が予想されていたが、年序盤からの新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大が経済活動や企業活動を停滞させ、20年前半は厳しい市場環境となった。それでも、在宅/巣ごもり関連でのパソコンやタブレット端末、ゲーム機需要の増大や、米中を中心とした年央からの自動車生産回復などがけん引し、20年の電子部品世界市場は軽微なマイナスにとどまった。
21年は前年後半からの回復基調が継続し、年初より、当初の想定を上回るペースで受注が推移した。春以降はさらに受注の勢いが増し、特に車載や産機向けの部品需要が好調に推移。スマホ向けも、春先以降、中華系スマホの生産調整がみられた一方で、欧米系のハイエンドスマホ向けなどの需要は底堅く推移した。加えて、サプライチェーンの混乱などを背景に、部品ユーザーが部品在庫積み増しに動いたことも電子部品需要をさらに拡大させた。21年は半導体不足に伴う自動車減産の影響もあったが、21年の電子部品受注は総じて高水準が継続した。
22年も年前半は前年までの流れが継続し、電子部品受注は堅調な推移が継続。加えて、22年春以降に進んだ為替の対米円安進行や、前年来の部品各社の高水準の受注残もあり、22年度上期の各社の決算も大幅な増収増益となった企業が多い。半面、半導体・材料不足の長期化やウクライナ問題に起因するエネルギー価格高騰、物流逼迫(ひっぱく)などが電子部品各社のオペレーションに影響を与えた。
一方、22年の後半に入ると、電子部品受注は全般的にやや陰りも見られるようになり、特に民生機器関連の低迷が続いたほか、それまで好調だった産業機器関連の需要もやや弱含むようになっている。
23年の電子部品需要見通しは、中国スマホの調整長期化や巣ごもり特需からの反動に加え、半導体関連投資の減速、FA/工作機械関連の需要の一服などにより、特に年前半は厳しい市況も想定されている。加えて、中国景気の低迷長期化や高インフレによる欧米消費市場低迷なども懸念されている。
一方で、23年は半導体不足の緩和による車載用電子部品需要の増大や自動化ニーズに伴うロボット需要増などへの期待が高く、また、中国のゼロコロナ政策終了に伴い、23年年央以降の中国経済回復も期待されている。
アプリケーション別では、xEVやADAS/自動運転関連の部品需要拡大が期待されるほか、ウエアラブル端末や5G基地局需要の増大、脱炭素関連の太陽光発電設備や急速充電器などの需要増も予想され、また、生産の日本回帰が国内での省人化ロボットなどの需要を活性化させるとの期待も高い。
需要押し上げ期待
電子情報技術産業協会(JEITA)の予測によると、22年の電子部品世界生産額見込み(円ベース)は前年比12%増の31兆111億円。23年の電子部品世界需要見通しは、22年見込み比5%増の32兆4143億円。23年は、世界的なカーボンニュートラルの流れを背景とする自動車の電動化促進や、5G関連需要の拡大、世界的な自動化ニーズの高まりやデジタル投資の拡大などによる電子部品需要押し上げが期待されている。
世界の電子部品市場で約34%のシェアを持つ日系電子部品メーカーの22年のグローバル生産額見込み(国内生産+海外生産)は、21年比9%増の10兆4106億円。23年のグローバル生産見通しは、22年見込み比4%増の10兆8456億円が予測されている。
日系電子部品メーカーの22年の国内生産額見込みは22年見込み比3%増の3兆4081億円。23年は22年見込み比3%増の3兆5134億円と予測する。
日系電子部品メーカー各社は、23年も伸びる市場・成長する顧客へのアプローチ強化や新規市場開拓への取り組みを強化し、成長の継続を目指す。
製品別動向
受動部品 xEVや5G向けなどで安定需要
23年の受動部品の市場は、年前半はパソコンやスマホなどの民生系需要の軟調な推移が予想されるものの、自動車のxEV化の加速やADAS/自動運転技術の高度化、5G関連需要の増大、脱炭素関連での需要創出などにより、年間では安定した需要推移が見込まれる。
受動部品の需要は、新型コロナによる影響で20年前半は落ち込んだが、20年後半以降徐々に回復すると、21年にはさらに受注に弾みがつき、車載、産機、ICT関連での需要増を背景に、多くの受動部品メーカーがB/Bレシオが1.0を大きく上回るペースで受注が拡大した。このため、チップ抵抗器やコンデンサーなどさまざまな部品で、部品不足も指摘された。
22年も前半は好調な市場推移が継続。中国経済低迷や巣ごもり需要の反動などで、民生機器関連の需要はやや鈍化したが、好調な産機関連需要や、xEV、ADAS関連などがけん引し、全体としては堅調に推移した。
今後の受動部品需要は、車載用では、引き続き自動車の高機能化に伴う車両1台当たりの部品搭載点数の増加が成長を支える見通し。本格的な自動運転化を見据えたADAS機能の高度化やコネクテッド化、さらにxEVシフトの加速が、高付加価値部品の需要を押し上げていく。
5G関連への期待も高い。5G端末や5G基地局向けに、高周波対応部品や基地局向け高信頼性部品、さらに5G化によるスマホの高機能化が、受動部品の員数増につながることが期待され、ハイエンドスマホ向けの超小型・高性能部品の需要が増大する。
22年に大きく需要が拡大した産機向けも、省人化ロボットや、xEV向け製造設備需要などの堅調な増加が予想されている。さらに、カーボンニュートラル化に向けた環境関連の設備投資増大も関連部品の需要を押し上げることが期待されている。
白物家電関連では、ウクライナ問題の余波で、欧州でガス暖房から電気暖房への切り替えが進んでいることから、エアコン向けのパワー系部品なども当面は堅調な需要推移が予測されている。
接続部品 脱炭素・省エネ関連などで成長継続
接続部品のグローバル需要は17年から18年前半まで好調に推移したが、18年後半以降は米中摩擦激化による設備需要減退やスマホの低迷などで鈍化し、19年も一段の下落が継続した。
20年は新型コロナの影響で年前半は厳しい環境が続いたが、年央以降は米中の自動車生産回復などで需要が持ち直し、21年には車載用部品の受注にさらに勢いが増すとともに産機関連需要も本格回復が進んだ。高級スマホやゲーム機向けも堅調に推移し、21年の接続部品市場は当初予想を大きく上回る成長となった。
22年も前半は車載や産機関連がけん引し堅調に推移。4~5月は上海ロックダウンによる納期先送りなども見られたが、6月以降は挽回が進んだ。分野別では、ICT関連の受注はやや軟調だったが、xEVやFA/工作機械、半導体製造装置などの堅調な推移が22年の接続部品市場をけん引した。
23年は、巣ごもり特需の反動や中華系スマホの調整長期化、さらにFA/工作機械需要の一服などにより年前半はやや踊り場的な推移も想定されるが、車の挽回生産やさらなるxEVシフト、中華系スマホの調整一段落、さらに脱炭素・省エネ関連の新たな機器需要などにより、年間では成長の継続が見込まれる。
接続部品各社が最重要市場の一つに位置付ける自動車市場は、CASEのメガトレンドに沿った自動車の高機能化により、「安全/安心」「高速大容量伝送」「大電流/高耐圧対応」「車体軽量化」などのニーズに対応した高付加価値部品の需要増大が予想されている。
ICT関連では、堅調な欧米系スマホやウエアラブル機器向けに、狭ピッチ・低背・省スペースの基板対基板コネクターや、小型大電流対応バッテリー接続コネクター、小型スライドスイッチなどの拡大が予想される。
産機向けは、FA機器・ロボットなどの高速・高性能・大容量化に対応した高速伝送用コネクターや次世代通信インフラ向け高速ソリューションのほか、医療関連やセキュリティー関連などでの需要創出も期待される。
変換部品 自動車挽回生産追い風に底堅く
変換部品のグローバル需要は、18年は車載や産機向け需要の増大により堅調だったが、19年は自動車・産機市場の停滞やスマホ市場での競争激化などが響き低調に推移した。20年は新型コロナの影響で自動車需要や産機需要が低迷し、変換部品メーカーにとっては厳しい一年となった。
21年は、前年後半からの自動車関連需要の復調や、産機関連需要の回復が変換部品のグローバル需要を反転させ、年間を通じて好調に推移した。22年も、自動車や産機関連の需要増などにより、変換部品市場は総じて堅調に推移。音響部品やセンサーは軟調だったが、アクチュエーターなどがけん引し、変換部品全体では22年も高い成長を遂げた。23年は前半は民生系の弱含みが想定されるものの、自動車挽回生産などを追い風に年間では底堅い推移が予想される。
モーターは、車の電子装備率上昇やxEV化進展が自動車1台当たりのポテンシャルを増大させている。車1台当たりのモーター搭載数量は高級車では100個以上とされ、中・小型車や軽自動車などでも年々増加している。
今後も、ADASの高度化やドライバーの快適性向上に向けた新たな機能付加などにより、車載用モーターのグローバル需要は成長が見込まれる。
モーターの製品開発面では、省エネや高効率、長寿命、小型軽量などの追求がさらに加速する見込み。
車載電装関連では、シートベルトプリテンショナー、エンジン吸排気、グリルシャッターなどの機能でのモーター需要創出も期待される。
音響部品は、ノイズキャンセル機能搭載ヘッドホンなどの高付加価値品の需要拡大、さらにIoTやAR/VR関連などでの新用途の拡大に伴う需要増加が期待される。
車載スピーカーは、欧州プレミアムカーを中心に車一台での純正スピーカー搭載数量が増加しており、今後も車の台数の伸びを上回る成長が予想される。完全自動運転車向けハイエンド音響システムに照準を合わせた製品開発も活発。
磁気ヘッドは今後もデータセンター向け高容量HDDでの需要増が期待されている。