2023.01.18 【情報通信総合特集】富士通 岡本青史フェローSVP

〈研究本部長〉

強みの技術融合して価値創造

 コンピューティングと人工知能(AI)、ネットワーク、データ&セキュリティーに加え、デジタル技術と人文社会科学を融合する「コンバージングテクノロジー」の5領域の技術開発に注力している。

 コンピューティングでは、専門知識がなくても量子計算機などの次世代コンピューターを利用できる新しいソフトウエア構想「コンピューティング・ワークロード・ブローカー」を打ち出した。ユーザー企業のタスクに合わせてアプリケーションを最適に使い分け、自動化につなげていきたい。

 疑似量子コンピューターシステム「デジタルアニーラ」をクラウドで展開する取り組みも活用事例が広がっている。膨大な選択肢から最適な解を探す「組み合わせ最適化問題」は運輸や物流以外にも応用できる。

 ネットワークのオープン化の流れの中で、電力の最適化とセキュリティーが重視されている。AIとの組み合わせで課題解決に取り組んでいる。

脱炭素も含め、サステナブルな社会づくりにはICTだけでなく、人文社会科学系の知見も欠かせない。コンバージングテクノロジーを進め、ICTと社会科学が融合して新しい価値を創出していきたい。

 当社は2019年から国内で約5600件、海外で約700件のAI提供実績がある。導入の際には、AIがどうしてこの答えを出すのか、判断理由が説明できるかを重視している。さらに運用、開発の自動化、AI倫理の三つの要素が信頼されるAIには求められている。今後は「この条件が成り立つのでこういう結論が導ける」という因果関係の研究開発が大きな潮流になる。

 セキュリティーではメタバースやデジタルツインが普及し、今後はリアルとデジタルの境界がなくなった「ボーダレスワールド」のゼロトラストに力を入れていく。

 2023年は、量子やAI、コンピューティングなど個々の研究だけでなく、それぞれの研究者同士が一緒にプロジェクトに取り組み、技術を融合してさらに強い技術を生み出し、社会に貢献していける年にしたい。