2023.01.17 【半導体/エレクトロニクス商社特集】トレックス・セミコンダクター 芝宮孝司社長
芝宮 社長
製品の新開発で進むべき道を示す
トレックス・セミコンダクターは、得意とする小型・省電力・低ノイズ技術を生かし、付加価値の高い電源ICを提供している。前期から続く旺盛な受注と円安による恩恵もあり2022年上期(22年4~9月)は過去最高の売り上げを達成。23年はファブレス企業でありながら供給能力の拡大投資を実施し、さらなる成長に向けた体制づくりを進める。
22年後半から市場在庫が膨らみ、高止まりしていた半導体需要に陰りが見え始めた。芝宮孝司代表取締役社長は「民生機器市場を中心に需要が落ち込んでいるが、当社は自動車や産業機器、医療分野が売り上げの6割を占め、それほど影響は大きくない。23年は全体では厳しい年となる可能性が高いが、中長期的には半導体需要は着実に拡大する。供給能力の増強投資を当初予定よりも早め、体制強化を図る」と話す。
同社はファブレス企業のため、生産を担うファウンドリーがあってこそビジネスモデルが成り立つ。近年、半導体不足の影響もありファウンドリーとの交渉は難航。「ファウンドリーに専用ラインを確保してもらう必要性を感じた」(芝宮社長)とし、22年10月にファウンドリーとの協業契約を締結。ファウンドリーの新工場に出資することで8インチ生産ラインを確保し、24年以降、中高耐圧製品の供給能力が増強される。
グループ会社のファウンドリー企業・フェニテックセミコンダクターへ投資も行う。鹿児島工場内にクリーンルームを新設するなど設備投資を実施。トレックス向け生産ラインも拡充、26年3月期には今年度比3倍の生産能力となる見込みだ。
フェニテックでは生産体制の増強とともにパワーデバイスの開発も進めている。中でもSiCに関してはコストパフォーマンスに優れ、チップサイズも小型化した3世代目のショットキーバリアダイオード(SBD)を開発し、22年夏にサンプル出荷を始めた。
芝宮社長は「ファブレス企業でありながら生産増強投資を前倒しで行うなど、23年はさらなる成長に向けた新たなフェーズに踏み込む。近年の急激な市場変化に合わせ、5カ年計画も変更予定。成長の原動力である新製品開発にも積極的に取り組み当社の進むべき道を示したい」と話す。