2023.01.19 【LED照明特集】「ライティング5.0」普及へ、30年度に構成40%目標・付加価値照明飛躍の一年に

付加価値の高い照明の普及拡大が業界にとってもカギになる

付加価値の高い照明の普及拡大が業界にとってもカギになる付加価値の高い照明の普及拡大が業界にとってもカギになる

 照明各社は2023年、昨年10月に掲げた付加価値照明の新定義「ライティング5.0」の普及促進に向けた活動を本格化させる。30年度にはLED照明の出荷台数に占める構成比を40%にまで高める業界目標を掲げている。高効率照明にとどまらず、IoT化を生かした制御技術を組み合わせることで、さらなる省エネにもつなげられる。脱炭素の切り札にもなってくるため、一般消費者への認知度拡大と並行して、メーカー側の取り組み姿勢も問われてくる。

 国内の照明市場は、LED照明の普及で大幅な需要拡大が見込みにくい状況になっている。この一年は素材やエネルギーの価格高騰などが響き、照明器具も各社が値上げに踏み切っている。ただ、LED照明は家庭用でも業務用でも価格プレッシャーが厳しい上、海外製の安価な製品なども市場を乱し、製品単体の販売では十分な利益を確保しにくくなっていた。

 付加価値の高い照明の販売を重視する傾向が強まる中で、業界を挙げてその普及促進を加速するために、照明各社が加盟する日本照明工業会(JLMA)が打ち出したのが、「CSL&HCL」だった。シーンに合わせた調光調色や、IoT照明など付加価値の高い照明を指すキーワードだったが、消費者だけでなく、業界にも浸透しきれなかった。

業界挙げて普及加速

 その反省を生かして、政府が推進する「Society5.0(超スマート社会)」に歩調を合わせるライティング5・0に呼称を変更。同時に普及目標を策定することで、業界を挙げた取り組みとして加速させる姿勢を強く示した。JLMAの島岡国康会長は「今年が実行の一年目だ」と強調している。

 国内の照明市場は、復調傾向が続き、コロナ禍前の水準に近づきつつある。今年度(4~11月)の出荷台数は、既存光源を含み前年同期比2.9%増の4447万2000台。LED照明は4420万5000台と2.7%増となる。既存光源の出荷が押し上げる形でLEDだけよりも全体出荷は拡大している。ただ、既存光源は、生産するメーカーが減る中で単価アップや需要増などがあり、前年成長はあくまで一時的なものと言える。出荷金額はLED照明で2桁以上伸びており、出荷台数拡大と合わせて、値上げや付加価値照明の拡大も影響していると見られる。

 LED照明に占めるライティング5・0の構成比は今年度(4~11月)で19・4%と約2割にまで高まっている。昨年11月単月では19・6%。JLMAが構成比の公表を始めた21年4月以降では微増といった形だが、各社が注力姿勢を示していることもあり、出荷構成は今後着実に高まっていくはずだ。

 工業会が推定する国内にあるストック(既設照明)の数は20年度で約18.1億台。21年度ではそのうち50.8%がLED照明に切り替わったとする。その内訳は住宅が52%、屋内非住宅が48%、屋外非住宅が61%と推定している。

LEDで脱炭素化

 オフィスや家庭でも電力消費量全体に占める照明の割合は小さくない。脱炭素に向けて、既存光源からのLED化で果たす役割は大きい。30年度で温室効果ガスの排出量を13年度比46%削減する政府目標に貢献するために、25年度でストックのLED化率を70%にまで高め、30年度で100%にすることが業界目標だ。

 シーンに合わせた質の高い光で、省エネに加えて、癒やし・快適などにもつながるLED照明の提供にとどまらず、IoT技術を活用した制御で単体でのLED化よりも、省エネ・節電を大幅に高める付加価値提案のためにも、ライティング5.0は切っても切り離せないものとなる。

 25年度にはその構成比を25%にまで高め、30年度には40%に拡大させることで、あかりの質の向上による照明空間の価値を高めるとともに、50年のカーボンニュートラル(脱炭素)にもつながる流れを業界として作り上げたいところだ。

 東京都内で13日に開催された賀詞交換会に来賓として参加した経済産業省商務情報政策局の金指壽情報産業課長は、「(温室効果ガス削減で)照明はキーデバイスの一つ。省エネと生活を豊かにする照明の普及に期待している」と話した。ライティング5.0を軸としたLED照明の普及拡大は、脱炭素に不可欠なものとして、業界を挙げた積極的な取り組みを促すとともに、政府としてもイノベーションを支援する考えを示した形だ。

 IoT化一つとっても、家電製品などに比べて照明はまだ普及率が低い。照明業界の底上げにもつながるライティング5.0の普及に向けて、今年はギアを切り替え、各社の事業を成長させるためにもアクセルを踏み込むことが求められている。