2020.01.27 太陽光発電 次の活用を探る 東京理科大学でシンポジウム

シンポジウムでは、会場からは活発な質問も出た

トヨタ自動車の増田泰造氏トヨタ自動車の増田泰造氏

乗用車に搭載、食物の育成とシェアリング

 太陽光発電技術の最新動向について報告するシンポジウムが、東京都新宿区の東京理科大学・森戸記念館であり、研究者や学生ら約50人が参加した。メガソーラーや家庭用などで急激に拡大した太陽光発電が新たに向かうべき展開が語られた。

 同大の研究所、総合研究院の太陽光発電技術研究部門が主催し、今年で10回目。大学研究所で太陽光発電技術に特化した組織を持つ例は珍しいといい、同大の研究者ら14人が所属し、電池のセルからシステム運用まで統括的に研究している。

 同部門は発足以来、毎年、研究技術の交流などを目的にシンポを続けてきた。今回のシンポジウムでは、ポストFIT(再生可能エネルギー固定価格買い取り制度)時代の太陽光発電の新しい広がりなどについて、企業や大学の研究者が報告した。

7割の車が走行できる可能性

 トヨタ自動車の増田泰造・革新エネルギー研究グループ主幹は、「太陽光発電が拓く新しいモビリティー」と題して報告。太陽光発電が持つ可能性として、乗用車に太陽光パネルを搭載する事例を紹介した。

 出力800Wのパネルを搭載しバッテリに充電しながら走行する乗用車の重さを600キログラム程度に抑えることができれば、国内で1日平均31キロメートル走行できる計算になるという。

 国内の乗用車の平均走行距離は1日24キロメートルほどにすぎず、国内の乗用車全体の70%が太陽光だけで走行が可能だという試算を示した。増田氏は「机上の計算だが、テストカーでも同様の結果が得られた。実現すれば、効果は大きい」と話す。

 また、パネルなどを乗用車に搭載する際の課題として、車の重量を軽くする必要がある。走行の燃費などにも大きく影響するため、現状で500キログラム前後あるバッテリを「究極的にはなくす方向が理想だ」(増田氏)という。そのため、増田氏は「レーザー光などの技術を活用し、走行中にワイヤレス充電できる技術開発を進めていくことが求められている」と指摘した。

 また、富士フイルムで長く太陽電池などを研究した経歴がある千葉工業大学の久保裕史教授は、農業での活用拡大を模索している。農地で高さ3メートルほどの架台にパネルを設置し、植物の栽培には過剰な分を活用して発電する「ソーラーシェアリング」という手法を説明した。レタスなどの葉物野菜では収穫量に影響がないことが実験で確かめられているという。

 さらに、簡易なモーターで太陽光を追尾してパネルを動かすことも可能で、固定型より年間で発電電力量が11.4%増加したことを確認できたという。久保氏は「簡単な技術であり、専門的な農業知識がほとんど要らない。売電などにより農業の収益増加や低コスト化に役立つ」と語った。